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「やはり、一番の問題はお金よね…‥」
ウチは底辺貴族。借金返済のため、領地を切り売りし、お家再興のためには娘をいいとこに嫁にやるしかないようなダメ貴族だ。うん? 嫁……。
そこで思い出した。
──わたしの嫁入り持参金。
この国では、娘を嫁に出す際に持参金をつける。持参金の額が少なくて破談になることさえある。
わたしを良いとこに嫁がせることを考えているなら、それなりの持参金があるはずだ。
まずはそれを確認しよう。
前世の佐倉あすかは就活に際して簿記やソロバンなんかの資格を取っている。帳簿を見るのは得意だ。
──翌日。
執事から帳簿を借りたわたしは、その中身に、頭を抱えてしまった。
お金に困ってるって知ってたけど、ここまでとは!
祖父がこさえた借金返済のため領地を切り売りし、収入が激減しているにも関わらず、何かイベントがある度に大きな出費をしていた。いわゆる交際費だ。
たとえば母のドレス。パーティ用のドレスは、パーティの度に新調してる!
一度着たドレスは二度と着ないでタンスにしまわれたままだ。日傘や靴もやたらと買い込んでいる。
父の場合は、狩りや釣りに使う道具だった。やたらと高いものばかり買っている。
それにカードゲームでの賭け金。祖父みたいに無茶な賭けはしてないけど、パーティの度に行われるカードゲームではいつも負けてばかり。ギャンブル下手は遺伝なのか。
中でも大きいのは、ウチで開くお茶会や晩餐会、舞踏会などのパーティだ。
料理やワインにあほみたいにお金をかけている。いちいちウミガメの肉なんか使うなぁ! なんだこのあほみたいな値段は!
貴族は、家の格式にあった暮らしをしなくてはならない。でないと社交界で馬鹿にされる。
普段の生活はできる限り抑えているけど、パーティなどのイベントがある度、借金してでも豪華なパーティを開き、ドレスや銀食器を買い、高額な賭け事に興じるのだ。
その典型が先日の祖父の葬儀だった。
かかった費用は、我が家の収入の約三年ぶん。近頃はお金を貸してくれる相手も減っているため、わたしの嫁入り持参金も全部葬儀につぎこまれていた。
「舐められたら終わりとかヤクザかっ! 身の丈にあった生活しろやぁ!」
頭を抱えたまま叫んでしまった。
消えたわたしの持参金……。あれだけあれば、小さな庭付きの家が買えるのに。
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