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04 ヨガ教室とお勉強
ヨガ教室を開いてお金を稼ごう! わたしはそう決心した。
破滅の未来から逃れるには国外逃亡するしかない。
そのためにはお金が必要だ。
それをヨガ教室で稼ぐのだ。
毎晩ソロバンをはじいて、必要な金額の試算を繰り返す。
むむむ…予想していたけど、かなり大きな金額になるな。
残された時間はあと四年。
正直、難しいと思う。でも、このままでは破滅するだけだ。がんばろう。
「まずは、多くの人に知ってもらわないとね」
逃亡計画とは別に、ヨガ教室運営のための新たなノートを用意して計画を立てる。
この世界にはSNSなんてものはない。広く情報を伝える手段は三つ。
まずはお知らせカード。
ダイレクトメールのもっと簡単なものと言えばいいかな。
軽いパーティのお誘いや、親戚以外への冠婚葬祭のお知らせ、出産報告など、簡単なお知らせはカードに書いて配るのだ。
手紙と違い、不特定多数の人の目に触れるから、工夫がいるな。
興味を持った人が、向こうから問い合わせてくるような感じにできたらいいよね。
次は手紙。
知り合いへの連絡手段は手紙が一番だ。他人の目に触れず、詳しく伝えたいことを伝えられる。
でも、わたしには友だちは多くない。底辺貴族の娘だから。
社交界──貴族の世界はこういうところ残酷で、付き合う相手は、あからさまに損得で選ぶ。わたしみたいな落ちぶれた家の子は相手にされないのだ。
その数少ない友だちも、ほとんどが同年代。つまりローティーン。美容と健康に悩むにはまだ早い。
となると、ターゲットは友だちのお姉さんや母親だな。お祖母さんでもいいかもしれない。まずはリストを作らないと。
三番目は口コミだ。
効果はあるけど影響力のある人が発信してくれないと広まらない。
交際範囲が広く、人気がある人に、ヨガの効果を知ってもらえれば、教室の存在は広まるだろう。
問題なのは、そういう人がわたしの知り合いにいないということだ。嫌われ者なら何人か知っているんだけど……。
社交界のインフルエンサーを見つけて、仲良くならないと!
「よしっ!」
方針は決まった。まずはカードから作ろう。
──美容と健康にお悩みの貴女。異国より伝来した、健康法をお教えします。
頭痛、生理痛、神経痛。動悸、目まい、息切れ。肌の荒れ、不眠、お通じにも!
「……なんか、うさんくさいな」
ほんとうに効くんだけど、文字にするとうさんくさくなるのはどうしてだろう。
効能をうたいすぎているのがいけないのか? 最初だから絞ったほうがいいのかも?
と、悩んでいると、ドアがノックされた。
侍女のメイだった。
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