04 ヨガ教室とお勉強

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「自分でも、よくわからなかったわ。何故、あなたを手駒にしようと思ったのか」 「えっ?」 「生まれも魔力も大したことない。容姿も平凡。学力は高いけど、その程度ならいくらでもいる」 「……その通りです」  素直にそう思った。傷ついたり、ムカついたりしない。  ヴィクトリアと比べたら、わたしなんか、モブキャラ同然だから。 「でも、考えてみれば、それがあなたの長所ね」 「はい?」 「注目されない代わりに警戒もされない。実は鋭い知性の持ち主なのに、誰もあなたを脅威とは捉えない。あなたのような人材は滅多に……っ」  言葉の途中でヴィクトリアがせき込んだ。 「ヴィクトリアさま?」  あわてて彼女に駆け寄った。  そういえば、彼女は幼い頃から病弱だと言われてたっけ。人前に出たのは、この前の誕生会がはじめてだと。  ヴィクトリアの細い肩に手を触れた。プラーナの動きで体調をみようと思ったのだ。 「さわるなっ!」  鋭い声で、わたしの手ははねのけられた。  その鋭い声よりも、ヴィクトリアがはじめて見せた感情に、わたしは驚いた。  せき込むヴィクトリアを、わたしは呆然と見ていた。  やがて落ち着くと彼女は言った。 「これから学園に入る準備をするわ。あなたにも付き合ってもらうわよ。毎週、ここに通うこと。いいわね」 「は、はい」  話しはそれだけだ、とヴィクトリアは身振りで示し、わたしは寝室を出た。  ヴィクトリアから解放されてほっとしながらも、同時に、わたしは彼女のことが気になっていた。  わたしの手をはねのけたヴィクトリア。あの時、彼女が浮かべた表情。  ──あれは恐怖だった。  あのヴィクトリアが恐怖を? 信じられない。  わたしの思い違いかもしれない。多分そうだろう。  ヴィクトリアは、お金も権力も魔力もすべて持っている。その彼女が、わたしの何を怖がるというのか。
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