04 ヨガ教室とお勉強

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 それから、わたしはナイトレイのお屋敷に通いながら、ヨガ教室をはじめた。  ヨガ教室のお知らせカードを配り、面識がある人には手紙を出した。でも、なかなか反応はなかった。  毎週、週のまん中〈水の日〉に、ナイトレイ家から迎えの馬車が来て、わたしをヴィクトリアの元へと運んだ。  両親は、娘がヴィクトリアさまに気に入られたと大喜びだった。  わたしが何をさせられているか、知りもしないで。  ヴィクトリアのご学友。その実態は、この国を支配するための計画、そのための資料整理だった。  情報収集は、ナイトレイ家が昔から雇っている一族がやっているらしい。  わたしがするのは、集められた情報の整理と更新だった。  有力な貴族、役人、商人たちの情報を集め、整理し、評価する。  家系、屋敷のある場所、家族構成にはじまり、交友関係、財力、領地の経営状況、影響力の大きさとその範囲。敵に回った場合の脅威度、弱みは何か、ということまである。  こわい仕事だった。CIAとかで働いている気分だ。  こんな仕事、十一歳の女の子のすることじゃないぞ。  ちなみに我がリーヴ子爵家は、評価・最低、財力・ゼロ、脅威度・皆無…並みいる底辺貴族の中でも最低のスコアだった。  知ってたけど、資料で見せられるとちょっとヘコんだ。  ヴィクトリアは、わたしのかたわらで整理された資料を読み込み、時間が空けば魔法学や政治や地理、経済の本を読んでいた。  彼女は、おそろしいほどの努力家だった。 「胃が…胃が痛ひ……」  ヴィクトリアの家に通うようになって半年ほど。わたしは十二歳になっていた。  おそろしいヴィクトリアのそばで、彼女のおそろしい計画を手伝う作業。そのストレスが胃に来ていた。  ヴィクトリアとは必要最小限の会話しかなかったけど、ヘタなこと言ったら殺される相手と、何時間も同じ部屋にいるのだからその緊張感はハンパない。暴君に仕える大臣って、きっとこんな気持ちなんだろう。  ヨガがなかったら、十二歳にして胃潰瘍になってたに違いない。  そのヨガも問題だった。正確にはヨガ教室だ。  逃亡資金調達のためにはじめたヨガ教室だけど、なかなか人が集まらない。  現在、教室の生徒は五人にも満たない。資金は必要額の1パーセントにも届いていない。  改めて計算したら、残り三年で目標額まで稼ぐには、ヨガ教室の生徒は一〇〇人くらいが必要だと出た。  そんなに集められないよ?  その事実が、わたしの胃をキリキリ締め付けていた。  そんなある日、新しい生徒がやって来た。  思いもかけない人が。
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