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そのひとは、快活な笑顔がとてもステキだった。
赤毛とブロンドの中間くらいの明るい色の髪。整った顔立ちだけど、「キレイ」というより「カッコイイ」というほうが似合う。今年で十五歳だというが、ずっと大人びていて、思わず「お姉さま」と呼びたくなる。
彼女を見た瞬間、わたしは硬直してしまった。
「ジーナ・トリリトンさん…!」
「あら、どこかで会ったかしら?」
硬直したわたしに、彼女──ジーナは明るく笑った。
「ええ、ずっと昔に、ですけど‥…」
彼女と会ったのは、前世でのこと。
──乙女ゲーム『恋はアルカナ』。
彼女、ジーナは、攻略対象の一人、リーマン・トリリトンの姉だ。そう、わたしを転落死させるリーマンの姉なのだ。
ゲームでは、不器用な弟の恋を応援する、お姉ちゃんキャラとして活躍していたっけ。
アスターと面識があるようなシーンはなかったと思うのだけど。
「えっと、それで何かお悩みになっていることがあるのでしょうか?」
ジーナさんは元気溌剌な美人。美容や健康に悩みがあるとは思えないので聞いてみた。
「悩み? 別にないわよ。でも異国の健康法というものが知りたくてね。ちょっとうさんくさい感じが気になったのよね」
やはりうさんくさいですか。でもそこにひかれて来る人もいるのか。
「それで? どんなものを使うの? ハーブ? 特殊な魔法の器具とかあるのかしら?」
「基本は呼吸です。それに様々なポーズを組み合わせます、器具は…ウェアとマットがそうかな? 特殊ってほどのものではないですが」
「あら、ずいぶんとお手軽ね。あなたって、欲がないのね」
「ええっ? そうですか?」
たくさんお金を稼ぎたいと思っているのですが。
「そうよ。美容と健康のためならいくらでもお金を出す人って多いのよ。わけのわからないポーションや器具をどんどこ買い込んだりね」
「なるほど……」
なんで気づかなかったんだろう。そう、教室だけでなく、グッズでも稼げるじゃない。
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