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ジーナさんは、代々魔法治療師として有名なトリリトン家のご令嬢。名家で顔も広い彼女の口コミは効果絶大だった。
次の週にはヨガ教室の生徒は二人増え、その次の週には三人増え、という具合に、どんどん増えていった。
ジーナさんには、健康グッズや健康食品の製作にも手伝ってもらった。
前世、不健康な生活をしていた佐倉あすかは、それ故に健康ヲタクでもあった。サプリや食材、通販で買った健康グッズ…それらを瞑想によって思い出し、製作した。
この世界には魔法の薬があるけれど、即効性で効果の高いものは副作用が大きいため、使用には細心の注意が必要だった。
わたしが作る健康サプリはその逆をゆくことにした。
痛みを消すのではなく、痛みの原因を改善する。体質を改善し、再発しないようにする。
これが当たった。
バカ売れというほどではないけれど、定期購入するお客を数多く獲得できた。
ヴィクトリアの元に通いながら、そこで知った情報も活用した。
集められた資料には、貴族や大商人たちの健康状態の情報もあったのだ。
そう、わたしは、美容と健康に悩むお嬢さま、奥さまたちが、どこにいるのか、それを知ることが出来たのである。
目に止まったお嬢さま、奥さまたちの家に、ヨガ教室と健康サプリのカードを配り、面識がある人には勧誘の手紙を出した。
ヴィクトリアとの「お勉強」が、あの胃の痛い日々が、プラスになる日が来るとは思わなかった。
ふと、前に、わたしのヨガの先生、ギヨムさんが言った言葉が思い出された。
──この世界はなるべくしてなっている。すべてはつながり、意味がある。
それってこういうことなのかもしれない。
◆ ◆ ◆
月日が経ち、季節が変わり、あっと言う間に二年が過ぎた。
国外逃亡の資金はそろそろ目標額に届こうかという頃、わたしアスターは十四歳になっていた。
来年は魔法学園に入学する年。なんとか間に合いそうだ。
計画を準備しながら、わたしは、この家を出ることに、寂しさを感じていた。
かわいい弟のアドニス。侍女のメイ。ジーナさん。あと、信じられないけど、あの両親にも、これが一生の別れになるかと思うと、切なさがこみ上げてくる。
そんなある日のこと、わたしはヴィクトリアに呼び出された。
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