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玄関のドアが開き、ガチャガチャと金属音を立てて鎧を着た戦士たちが入って来た。
──これゴレームガード?
よく見たら、戦士たちは魔法で動く人形ゴーレムを武装させたものだった。お金持ちのお屋敷では、警備用に使われていて、それらはゴレームガードと呼ばれている。簡単に言うと魔法で動く警備ロボットだ。
ホールのまん中に進み出たヴィクトリア。それを三体のゴーレムガードが取り囲む。
ゴーレムたちは剣や槍といった武器を構え、じりじりとヴィクトリアに迫る。
ヴィクトリアは目を閉じ、動かない。意識を集中しているようだ。
ゴレームガードたちが更に一歩を踏み出す。かっとヴィクトリアの目が見開かれた。
ヴィクトリアの背後に、アルカナカードが出現した。──雷に破壊される塔のカード。次の瞬間、ゴーレムたちが雷撃に包まれ、粉々に砕け散った。
「──これは、『滅びの雷』…!」
「そう、これがわたしのアルカナ。あらゆる魔法、魔法の道具を破壊する力よ」
ヴィクトリアが唇をつり上げて笑う。
ゲームで見て知ってたけど、自分の目で見たヴィクトリアのアルカナの威力は凄まじいものだった。
ゴレームばかりか彼らが手にしていた剣や槍までがねじれ、砕け散っていた。
「そう脅えることはないわ」
震えるわたしにヴィクトリアが言う。
「わたしのアルカナの威力は、対象が持っている魔力に比例する。第一級の魔法使いや騎士たち相手なら、このゴレームガードたちみたいになるけれど、あなた程度では少し気分が悪くなるくらいですむわよ」
それは、「あなたを殺す時は別の方法を使うわよ」と、わたしには聞こえた。
ヴィクトリアは席に戻り、お茶を一口、口にした。
震えたままのわたしを見て、ヴィクトリアは笑みを浮かべた。
「では、二つ目の用件よ」
「は、はい」
落ち着こうと、わたしもお茶を一口、飲んだ。
「あなた、異国の健康法というのを広めているそうね。ヨガ…だったかしら?」
「ぶはっ!」
驚きのあまり、むせてしまった。
うっかりしていた。
ヨガ教室が評判になれば、ヴィクトリアの耳にも届くのは当然だった。
「近頃、評判だと聞いたわ。それがどんなものか、詳しく聞かせてもらえるかしら?」
冷たい酷薄なヴィクトリアの目がわたしを見ている。
ヨガで逃亡資金を稼いでいることがバレた!?
あわわわ、ど、どうしよう!
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