01 異世界転生! ヨガでスローライフのはずが…

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 ──佐倉あすか。  それが前の世界、前世でのわたしの名前だった。  平凡な独身OL。年齢は……アラサーとだけ言っておく。  わたしが務めていたのは不動産関係の会社。体育会系な企業体質なためか、いまだに精神論がはびこり、やたらと業務外の仕事が多く、パワハラ、セクハラは日常茶飯事だった。  いわゆるブラック企業。その典型みたいな会社だった。  数少ない趣味は乙女ゲーム。でも休みが少ないため、なかなかゲームをする時間がなかった。  長時間勤務による疲労、そしてプレイできないゲームは積み上がるばかりだった。  そんなある日、わたしは職場近くにヨガ教室を見つけた。  慢性的な頭痛と肩こりに悩んでいたわたしは、その改善になればとそこに通うことにした。  あまりキレイとは言えない雑居ビル。その中にある小さなヨガ教室。  主催しているのは年齢不詳のおじいちゃんで、昼間は子供たちや主婦に、夜は会社帰りのOLにヨガを教えていた。  インドの山奥で修行したというそのおじいちゃんは、日焼けした肌といい、張りのある声といい、とても若々しい人だった。  おだやかな人柄で子供たちに好かれていて、「仙人」と呼ばれていた。  毎週水曜日、わたしは仕事帰りにヨガ教室に通った。水曜日は残業してはいけない日なので定時に上がれるのだ。  ヨガ教室に通うのは楽しかった。  わたしの人生で、こんなに好きになったものは他には乙女ゲーくらいだろう。  それだけわたしはヨガにハマった。  それまでは、毎朝出社するのがいやでいやで仕方がなかったのに、ヨガ教室に行く水曜日だけはウキウキして家を出るようになった。  そんなある火曜日のことだった。  その日、予定外の残業をさせられたわたしは、過労で倒れそうになった。  いやほんとに倒れたといえるかもしれない。  疲れでへろへろになったわたしは、道路にふらふら迷い出てしまった。気が付いた時は、すぐ目の前に大きなトラックが迫っていた。  まだプレイ中のゲームがあるのに。  明日は、ヨガ教室に行く日なのに……!  迫り来る凶暴なヘッドライト。その光芒に包まれながら、わたしはそんなことを思った。
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