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02 わたしの人生、もう詰んだ……
わたしが転生した世界は、乙女ゲームの中だった。
そしてわたしアスターは、悪玉チームの中ボスで、死亡確定のキャラクター。
ヴィクトリアの誕生会から戻って来たわたしは、ベッドにつっぷし、絶望に沈んでいた。
せっかく第二の人生(異世界)で幸せに暮らせると思ってたのに。
死亡確定のキャラだったなんて。
わたしの人生、もう詰んだ……。
「……いや、あきらめるのはまだ早い!」
わたしは飛び起きると床に座り、蓮花座を組んだ。
佐倉あすかだった時の記憶をはっきり思い出すため、瞑想に入る。
ゆっくり息を吸い、それを身体の深い場所へと下ろしてゆく。深く…深く…下ろしてゆく。
あのゲームのことを、思い出すんだ。
詳しく思い出せば、助かる道を見つけられるかもしれない。
プラーナを下ろし、溜め、そして昇らせる。
チャクラを開き、回す。
……思い出してきた。見えてきた。
ゲームの起動画面が目の前に広がる。
星が散り、伏せたタロットカード(みたいなもの)、そしてタイトル『恋はアルカナ』が表示された。
──乙女ゲーム『恋はアルカナ』。
魔法学園に入学したヒロイン・エマが、イケメンキャラクターたちと恋しながら、学園にはびこる邪悪な組織と戦う、というストーリーだ。
ヒロインはじめ登場キャラクターは〈アルカナ〉という秘められた特殊能力を持っている。それがタイトルの由来だ。
いわゆる必殺技やスキルに相当するものだ。発動するとタロットカードっぽいアルカナカードが現れる。その派手な演出がウリの一つだった。
主人公のエマ・ハートは、平民で、魔法と縁のない家で育てられたにもかかわらず、魔法特待生として入学。そのため周囲からやっかまれ、いじめを受けたりする。
そんなエマと最初の友だちになるのがわたし、アスターだ。
ガリ勉で地味子で同じくいじめられっ子ということで、アスターはエマと仲良くなる。
でも…それは表向き。偽りの友情だった。
アスターは、学園を支配しようともくろむ秘密結社ネフィルサークルの幹部だった。組織の脅威となるエマを見張るため、アスターは彼女に接近していたのだ。
ゲームの中盤でその正体がバレたアスターは、エマを殺そうとして、逆に倒されることになっている。いわゆる中ボスというポジションだ。
「悪玉組織の中ボスってなにそれ!」
興奮して、瞑想が破れてしまった。
だって中途半端じゃない?
善玉チームに倒される悪役としても、悪玉チームのポジションにしても中途半端だよ。
上ならラスボス。下なら下でザコがよかった。
ラスボスなら悪事をやめれば助かるし、下っ端なら逃げればいいだけだ。
でも中ボス。
一番めんどくさくて、割を食わされるポジションじゃない。
いや文句言っててもはじまらない。瞑想を続けよう。
まずは、ちゃんとゲームの内容を思い出すんだ。
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