三話 天才の思い通りになるのはやっぱり癪

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「さあ着いたぞ、シオン。 この馬車だ」 「…………嘘だろ」  兄貴に促されどこまでも続いていそうな街道に目を向けてみると、そこには見る影もないオンボロな馬車があった。  今にも壊れそうな程やばいやつが。 「……なあ兄貴、本当にこれで合ってんのか?」 「そうだぞ。 なんだ、嫌なのか? 文句を言うもんじゃない。 追放者が馬車に乗って去れるなんて夢のような状況なんだぞ?」  いやまあそれはそうかもしれんけども。  だからってこれは無しじゃない?  窓は割れてるし、走り出したら車輪が外れそうなくらいガッタガタなんだが? 「本当に走るんか、これ?」 「シオン…………」  兄貴が腰に手を当てて溜め息を吐くが、俺は気にも止めず更に文句を連ねる。 「だってこれ絶対あぶな…………」 「あんたね……」  するとそれに苛立った姉さんが耳を引っ張り、御者台まで引っ張っていった。 「いだだだだ! 姉貴、ストップ! 耳がちぎれるって!」 「うるさい! 良いからとっとと行きなさい!」  どうやら観念するしかないらしい。 「分かったよ、乗りゃあ良いんだろ…………。 あー、いてぇ……」 「まったくこの子ったら……」  渋々諦めた俺は耳を労りながら御者台に手をつい…………。  っておい、ちょっと待て。 「なんで俺が御者台に乗るんだよ! 御者のおっさんは!? なんか代わりに俺が助けた女の子が手綱握ってるしよ!」 「こ、こんにちはお兄さん! 昨日ぶりですね! あの……これからよろしく…………」  少女が矢継ぎ早に喋ってくるが俺はそれをスルーして、一旦姉の方を向いた。 「ええ、居ないわね。 だって行き先を私達以外に知られるわけにはいかないでしょう?」  あの仏頂面な姉貴が眩しい笑顔を……!  うわあ、似合わねえ!
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