二話 まったくこれだから貴族ってのは 3

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二話 まったくこれだから貴族ってのは 3

「あー、えっと…………この剣は置いていかないとな」  昨日帰ってくるなり机に放りっぱなしだったブロードソード入りの鞘を拾い、それを所定の位置である壁掛けに設置する。  この剣は騎士になった者のみに預けられる由緒正しい真剣だ。  元々は国の資源な為、持ち出したら犯罪となる。  なので置いていくしかない。  一年ほど相棒を努めてくれたそいつを。 「鎧と制服は後でメイドが取りに来るらしいからベッドに集めておいてっと。 それじゃあ次は……」  まず手に取ったのは使用する際インクが出るようになっている魔法のかけられた羽ペンだ。  これは初めての給料で買ったものだから置いていきたくないので、一番始めに麻袋に突っ込んでおく。  次に手に取ったのはスクロール。  これについては特筆すべき思い入れは無いが、先週メモ用紙用に買ったばかりなので勿体無いため、こいつも袋に突っ込んでおこう。 「よっと。 ん~と後は…………飲み物系は水筒だけで良いな。 重くなるし。 あっ、食料は入れておくか」  食料と言っても菓子や干し肉だが。  まあ旅の道中腹の足しにはなるだろう。  とそれらも袋に…………入れようとしたその時。  コンコンコン。 「────あん?」  扉がノックされたのである。 「誰だ、この忙しい時に……。 もしかして兄貴か?」  思い当たる人はそのくらいだ。  後は先輩ってところか。 「空いてるぞ。 勝手に開けてくれ」  ノックしたのが誰にしろ、騎士団の人間には違いないだろうと扉越しに声をかけてみた。  許可を出せば入ってくるかと思って。  しかし扉の向こうに立っているであろう何者かは扉を開けない。 「………………? おい、入って良いって言ってるだろ」  俺は何がしたいのか意味の分からない来訪者にもう一度声をかける。  だが尋ねてきた者は何故か扉のドアノブすら掴む気配がない。  それどころかまた、コンコンコン。  先程と同じくノックが三回鳴らされた。 「なんなんだっての、ったくよ。 はいはい、分かりましたよ。 開けますよ」  俺は諦め溜め息を吐きながら、仕方なく扉を開けてやった。  すると目の前には白銀のアミアミおさげがとても似合い、纏う物からも高貴さを感じるとんでもない美少女が……。 「あっ、シオンくん。 えへへ、来ちゃっ」  パタン。  絶世の美少女がまるで付き合いたての彼女みたいな言葉と微笑みを見せるなか、俺は扉を閉めた。
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