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二話 まったくこれだから貴族ってのは 4
「なんであの人が…………」
どうして高貴なるお方。
リカード王国王位第一継承者であるアリシア姫が、こんなちんけな場所に来ちゃったんだ。
……俺に会うために決まってるが。
コンコンコン。
「あのー……シオンくん? 入っても良い?」
………………。
「……はあ、仕方ない」
彼女とは少しばかり色々ある為、顔を見ずに去りたかったが来てしまったものはしょうがないだろう。
下手に断ったりしたら兄貴辺りにどやされそうだし、と俺は溜め息まじりにドアノブを捻り。
「分かった。 さっさと入ってくれ、シンシア」
「うん、ありがとうシオンくん。 んーん、彼氏くん」
開けてやるとアリシアはそんな軽口を叩きながら、俺のベッドに腰かけた。
「誰が彼氏だ、誰が……。 その話は終わっただろ……。 そもそも町でナンパした時はあんたがお姫様だと知らなかったんだっての。 あんたもあんたで何でこんな奴のナンパに応えてんだ……」
「そんなのもちろんシオンくんに惚れたからだよ。 んー、違うかな。 惚れてた……からかな」
それってつまり一目惚れとか、気まぐれで付き合ったわけじゃないってことか?
「どういう意味だ。 もしかして俺らって半年前より知り合いだったのか?」
「うん、そうだよ。 って言ってもわたしが一方的知ってただけどね。 だから驚いたよ。 まさかシオンくんの方から声をかけてきてくれるなんて思わなかったから」
「へ、へぇ……」
親父と国王は昔馴染みで親友らしいから、もしかしたら親父が俺の話や似顔絵を見せたのかもしれないな。
だからといって話した事もない相手を好きになるなんて、俺からしたら考えられないけれど。
とシンシアに呆れながら椅子に腰かけたその時。
またしてもノックが。
「ああ? 次は誰だよ。 はいよ、開いて……。 あっ! ちょっとま……っ!」
何の気なしにノックに返事したが、この部屋には現在お姫様がおられるのだ。
もしこんな一般騎士の部屋にお姫様が居ると知られてみろ。
大問題待ったなしだ。
なので俺は咄嗟に止めようとしたのだが。
時既に遅し。
「ああちくしょう」
「失礼するよ、シオン」
隊長クラスの鎧を纏った騎士の男女二名が踏み入ってきてしまったのだ。
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