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一話 厄介な問題ほど舞い込んできてしまうものである 2
「では私は向こうの見回りをしに行く。 シオン、お前は裏路地を見回りに行け」
「ういっす」
フルプレートを装着した先輩騎士にそう返すと、ため息混じりでこう言ってきた。
「お前と言う奴はもう少しちゃんとした返答を出来んのか。 あのエンデュミオン家の末子なのだろう?」
「はは、すんませんっすね。 姉貴や兄貴と違って俺はこんな感じなんで、そこは期待しないで下さいよ」
「ふぅ…………全く貴様と言う男は。 しようの無い奴だ。 まあ良い、さっさと行け。 サボるんじゃないぞ」
先輩はそう言い残し、大通りの暗がりへと姿を眩ました。
「流石先輩、お見通しか」
なんだかんだ騎士団に入ってから最も付き合いの長い人だけあり、俺の性格をよく理解している。
ただでさえ家名の件が無ければ騎士になんかならず、ギルドに入会して冒険者となり、自由気ままな生活をしていたであろう俺だぞ?
そんな貴族の家柄とは真逆な性格の俺が、騎士なんて由緒正しい仕事を全うする筈がない。
サボれる時にはサボる、それが俺だ。
「んじゃ、サボれる場所探しますかね」
当然一人になれたこのチャンスを俺が活かさない筈もなく、俺はポケットからクッキーの袋を取り出し。
「んぐ…………まあまあ旨いな、これ」
中身を貪りながら路地裏に入っていったのである。
座る場所でも探す為。
もちろん仕事の為じゃない。
「だ、誰か助けて! いやああああ!」
「これ、大人しくしろ! わしを誰だと思うておる! 抵抗するでないわ!」
…………嘘だろう?
クッキーで小腹が満たされたから、迷路みたいに曲がりくねった路地裏の一角にある、人が寄り付かない公園で一眠りしようかと足を運んだのだが。
まさか……。
「お、お願いします! 他のことなら何でもしますから、それだけはやめてください! お願いします!」
「もう遅いわい。 観念して私の息子を受け入れよ、ふひひ」
まさかたまたま立ちよった公園で、年若い黄金に輝くロングヘアーの女の子が、醜い豚みたいな地上げ屋っぽいおっさんにレイプされかけているとは夢にも思うまい。
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