一話 厄介な問題ほど舞い込んできてしまうものである 4

1/1
前へ
/17ページ
次へ

一話 厄介な問題ほど舞い込んできてしまうものである 4

「こいつは…………」 「これが証拠だ! 貴様も一騎士なら知っておるだろう! このテキーラ家の紋章をな!」  ああちくしょう。  確かに男が見せてきたペンダントには、テキーラ家の家紋である獅子が彫られている。  これは間違いなく初代国王から送られたテキーラ家に代々伝わると聞くペンダントだ。  つまりこの男は…………。 「これで分かったか! わしが誰か理解したんならさっさと何処かへ行け!」 「ぐ…………」  どうする、どうすれば彼女をこいつの魔の手から救える?  殴って気を失っている隙に彼女を連れ出す方法もあるが、それをやったら兄貴達が窮地にたたされてしまう。  無理だ。  だとしたらなんとか説得するしかないが…………と、悩んでいたらその姿に女の子は不安に思ったようだ。 「た、助けてくださいますよね……?」 「それは…………」  助けたいが、俺だってどうしたら良いのか分からないのだ。 「何をしておる! さっさと行かんか! そんなに家族を貶めたいのか、貴様は!」 「ッ……!」  ああもうどうにでもなれ!  親父達も女の子を助けて苦労するよりも、見捨てて安穏と暮らす方が嫌だろう!  多分。  と俺は組敷かれている彼女を救うため、ビブレを押し退け、女の子を立ち上がらせた。 「すいませんがね、目の前で犯罪が行われてるってのに放っておけないんすよ。 あと女の子を見捨てるのは俺の主義に反するんで。 って訳でどけ」 「うおっ! き、貴様、ふざけるな! わしが誰なのか未だに分からんのか!」  俺に押し退けられ尻餅をついたビブレが、元から醜い顔面を更に歪ませ激怒してきた。  が、それに構わず俺は女の子を抱き寄せこう言い放つ。 「分かってますって。 ビブレ様ですよね? だからって見過ごせんでしょうが。 おいあんた、大丈夫か?」 「は、はい……。 あの……ありがとうございます……」 「礼は後な? 取り敢えず胸元直したらどうだ?」  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加