一話 厄介な問題ほど舞い込んできてしまうものである 5

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一話 厄介な問題ほど舞い込んできてしまうものである 5

 無理やりワンピースを剥ぎ取られそうになったのだろう。  胸元がはだけて谷間が見えているのをそれとなく教えてやると、女の子は恥ずかしそうにいそいそと直す。  そんな中、ビブレが立ち上がりついでに尻を擦りながら叫んできた。 「おのれ、エンデュミオンの倅! 貴様の兄も父親もわしが知らんとでも思うておるのか! わしが一声掛ければ……」 「どうぞご勝手に。 親父も兄貴も自分でなんとかするでしょうよ。 みんな出来損ないの俺と違うんで」 「ぐぬぅ……!」  最早破れかぶれな俺の態度に自分の言葉が通用しないと知り、ビブレは唸った。  が、次の瞬間、とんでもない言葉を口走ったのだ。 「それじゃあ俺達はこれで。 ああ、申し訳無いですけど今回の件は兄貴…………騎士団長に報告しますから」 「な、なんだと……!? 貴様ふざけるな! もしアルカードの若造に告げ口してみろ! 貴様の姉をわしが必ず手篭めにしてやるからな! それが嫌ならその娘をおいていけ!」 「…………なんだと?」  姉を傷物にする。  その言葉を聞いた俺は寄りかかっている女の子の肩を抱きながらつい立ち止まってしまい、ビブレをチラリと一瞥した。  するとビブレは俺の反応に何かを思い立ったのか、ニヤリと不気味な笑みを浮かべ…………、 「そう……そうだ! 今からでも遅くはないぞ、シオン・エンデュミオン! その娘を置いていき此処であったことを見なかったとすれば、貴様の姉には手を出さん! 必ずな! だが貴様が我を通すなら……」  俺の肩をポンと叩き、振り向かせようとした刹那の事。
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