御曹司アルファはオメガ秘書を溺愛したいのに

第一話

最近はこのような
ビジネスの話だけではなく、
龍牙への『見合い』の誘いが絶えないのだ。

数ヶ月前アメリカ帰りの龍牙の弟である三男の世那が、
帰国し早々ASKA　PHARMAの社員である優秀なオメガ男性と結婚した。
飛鳥家の子息・・・いや、アルファの名家の子息であるならば
アルファの血筋を確実に残すために、
アルファ女性との婚姻が暗黙のルールだ。
なのでこのことは、周りだけではなく、
ニュースでも取り上げられるほど日本中で大きな話題となった。
この前代未聞の三男の結婚が引き金となり、
ASKA　PHARMAと確固たる縁を作りたいと思っていた
娘を持つアルファの経営者たちが焦りはじめ
結婚適齢期である龍牙を自分の娘と結婚させようと、
見合い話が増えた。

本来ならば
長男にまず矛先が向くところだが、
長男は根っからの理系で研究者。
いずれ会社は
寡黙だが頭が切れカリスマ性のあると言われている次男の龍牙と
行動力があり人付き合いも上手いとされている三男の世那が二人で
経営していくだろうと周りは見ている。

龍牙とアルファ女性との結婚は
飛鳥一族が望むものであり、
そのことも踏まえ、
あらゆる思惑のもと舞い込む見合い話を
精査しながら
ASKA PHARMAにとって
よりよい『花嫁候補』を選定することも
社長候補大本命である龍牙の秘書の
楓の仕事に含まれ、
現に社長秘書の大塚にも念を押されていた。

それなのに
龍牙ときたら、
全く協力的ではないので
楓は手を焼いていた。

今回誘われたパトラ商事は、
日本を代表する総合商社の一つ。
ASKA　PHARMAにとっても悪くない話だ。

令嬢は龍牙よりも3歳年下だが龍牙と同じ大学出身。
以前パトラ商事が主催していたパーティーに
楓も龍牙の付き添いとして呼ばれ、
令嬢と会ったときに
外見の華やかさや美しさだけではなくて、
気品もある彼女に、楓は良い印象を持っていたのだが・・・。