プロローグ

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プロローグ

「専務、 発情期が始まりましたので 本日はお休みをいただきます」 新垣楓(あらがきかえで)の月1度の発情期が今月も訪れた。 この世界の人間は、多くの動物のように 発情期が『ある』者と、『ない』者がいる。 『ある』か、『ない』か、 それは、男、女という第一の性とは別に それぞれが生まれ持った アルファ、ベータ、オメガという第二の性(バース)によって異なる。 発情期が『ない』のはベータ、 発情期が『ある』のはアルファとオメガ。 アルファの発情期は 発情期中のオメガのフェロモンに誘発される時のみ突発的に起き、 一方のオメガは、定期的な発情期があり、 男性でも妊娠な体になっている。 楓はオメガ男性だ。 オメガの発情サイクルはほとんどの場合1ヶ月に1回で、 その期間は1日から1週間と、人それぞれ。 主な症状は発熱と、体が性的興奮状態に陥るということ。 発情期になると、本能的にアルファを求めるオメガは、 アルファにとって魅惑的な香りのする性フェロモンを放つ。 歴史上、常にカーストトップであったアルファでも、 それだけには抗えないため、 オメガは人を「惑わす」存在とし 歴史上差別や迫害などをされ続けてきたが、 現代ではオメガの発情を抑制する薬の開発が進み、 大半のオメガは 匂いを含む発情期の症状を薬で抑制することが出来るようになり 差別も減り、オメガの社会進出がより容易になってきている。 それでも抑制剤は全ての体質のオメガに効くものではなく、 抑えられない発情期に 苦しみながら生きているオメガは未だに存在する。 楓も、 自分に合う薬が無く、 発情期には大変な苦しみを経験するオメガの一人だ。 しかし 幸運なのか、皮肉なのか、 日本トップの製薬会社ASKA PHARMAの 専務取締役付き秘書として働いている。
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