プロローグ

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発情期が始まってから もう15時間ほど マスタベーションを繰り返していた楓の体は 何度か洗い流したが、 未だ精液でベタベタしている。 しかし龍牙は躊躇うこともなく 汚れた楓をタオルも使わず 高級ベルギーブランドの生地で仕立てた スリーピーススーツのまま抱き抱えた。 「服が・・・」 楓は申し訳なさそうに告げたが、 160cmと小柄な身体を 185cmで筋肉質の龍牙は何も言わずいとも簡単に 横向きに抱きかかえながら そのままベッドへと運ぶ。 楓の細く柔らかいベージュ色の髪が 龍牙の堅い黒髪に触れるほど 距離がぐっと近くなると、 アルファである龍牙の首元から漏れるフェロモンが 楓の嗅覚をもろに刺激し、 楓の腹の内側はズキンズキンと脈打った。 龍牙も同じだった。 楓のどろっとしたバニラシロップのような 濃厚な甘い香りにあてられ スーツに隠れた雄は猛り立っていた。 龍牙は楓を冷たいシーツの上にうつ伏せにすると その上に覆いかぶさりった。 狐に後から狩られ身動きが出来ないウサギのような格好だ。 ゴツゴツとした大きな手で クセのある襟足を 下から撫でるようにあげると、 (うなじ)が露わになる。 真っ白な陶器のような肌に、 浮き上がる紅い痕。 15年前に刻まれた歯形が 今も生々しく残っている。 番の印だ。 番とは、 アルファとオメガだけで結ばれる特別な契約で、 アルファが発情期中のオメガの頸を噛むことで成立する。 その噛み跡は一生消えない番の印になる。 番になると どんなアルファでも惹き寄せてしまっていたオメガのフェロモンは 番のアルファだけに効くようになり、 それと同時に、オメガは生理的に 他のアルファとの性交ができなくなる。 番の契約はどちらかが死ぬまで解除することはできない重いものだ。 そんな一生の痕を楓に残した張本人は 太長い指の先で、それをなぞると、 再びその場所を強く噛んだ。
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