3年後

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 いつまでもわたしたち2人の顔が映っているのが気に入らないらしい。わたしと侑希さんは顔を見合わせて「しょうがないな」とアウトカメラに切り替えた。 「可愛いでしょ」  電話の向こうで羽原君が息を呑む音が聞こえる。次に漏れ出た言葉は「かわいいなおい」だった。 『マジで双子じゃん。二卵性だっけ? どっちがどっち?』 「左が兄で右が妹。輝希(てるき)咲希(さき)だよ」 「さくらさんに似て、2人とも可愛いでしょう」 『いや、可愛いけど、テレビ電話だし、まだ生後1ヶ月だし、どっちに似てるか分かんねぇわ』 『莉衣菜が病院で見た時、2人のいいとこどりしてるなって思ったよ。生まれたてだったけど、2人の子だなって思った』 『そりゃそうだろ、さくらと侑希の子なんだから』  ありゃりゃ、莉衣菜ちゃんと羽原君が小さな(いさか)いを起こしてしまった。わたしと侑希さんは顔を見合わせて苦笑する。  最初双子だと聞かされた時はかなり驚いた。二卵性だけど確率は0.2%~0.3%で、そうそうない奇跡だった。妊娠当時から診てもらっていた柴咲記念病院で1ヶ月前に産まれてくれて、でも未熟児だったのでしばらく入院していた。  侑希さんは出産に立ち会ってくれて、莉衣菜ちゃんは柴咲記念病院で看護師をしていたので、生まれたと同時に見に来てくれた。羽原君だけが見てなくて、退院したのでこうしてテレビ電話をしているというわけだった。
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