95人が本棚に入れています
本棚に追加
いつまでもわたしたち2人の顔が映っているのが気に入らないらしい。わたしと侑希さんは顔を見合わせて「しょうがないな」とアウトカメラに切り替えた。
「可愛いでしょ」
電話の向こうで羽原君が息を呑む音が聞こえる。次に漏れ出た言葉は「かわいいなおい」だった。
『マジで双子じゃん。二卵性だっけ? どっちがどっち?』
「左が兄で右が妹。輝希と咲希だよ」
「さくらさんに似て、2人とも可愛いでしょう」
『いや、可愛いけど、テレビ電話だし、まだ生後1ヶ月だし、どっちに似てるか分かんねぇわ』
『莉衣菜が病院で見た時、2人のいいとこどりしてるなって思ったよ。生まれたてだったけど、2人の子だなって思った』
『そりゃそうだろ、さくらと侑希の子なんだから』
ありゃりゃ、莉衣菜ちゃんと羽原君が小さな諍いを起こしてしまった。わたしと侑希さんは顔を見合わせて苦笑する。
最初双子だと聞かされた時はかなり驚いた。二卵性だけど確率は0.2%~0.3%で、そうそうない奇跡だった。妊娠当時から診てもらっていた柴咲記念病院で1ヶ月前に産まれてくれて、でも未熟児だったのでしばらく入院していた。
侑希さんは出産に立ち会ってくれて、莉衣菜ちゃんは柴咲記念病院で看護師をしていたので、生まれたと同時に見に来てくれた。羽原君だけが見てなくて、退院したのでこうしてテレビ電話をしているというわけだった。
最初のコメントを投稿しよう!