95人が本棚に入れています
本棚に追加
2人の子はベビーベッドでスヤスヤと寝息を立てて落ち着いている。つい触れたくなってお兄ちゃんのほっぺを人差し指でツンツンすると、口をモゴモゴさせて起きそうになった。しかしすぐに規則正しい寝息を立てて眠りにつく。
ホッとしていると、今度は侑希さんが妹の手に自分の人差し指を持っていって握らせようとした。しかしすでに手をグーにして寝ているので侑希さんの目論見は達成されずに肩を落とす。
思わずふふふ、と笑うと侑希さんも微笑んで、温かい気持ちになった。きっと幸せとはこういうことをいうんだろう。多幸感に包まれていると、電話の向こうから『そういえば』と羽原君の声がした。
『飼ってる犬はどうしてんの?』
『そうだよ、つぼみちゃんはどこにいるの?』
画面の向こうで2人がキョロキョロする。さっきも思ったけど、そこから探しても見つからないと思うけど。
「つぼみさんは柵の中で大人しくしてくれてます。ちょっと可哀想だけど……」
我が子からスマートフォンを離し、侑希さんは仏間へ向かった。わたしもその後を付いて行く。柵で囲われたスペースの中に、たれ耳で薄茶色の雑種犬が丸まっていた。近付くとゆっくり立ち上がる。
「攻撃するわけないと思うんですけど、一応しばらくは離しておこうかなって……」
輝希と咲希を身ごもった時からつぼみはわたしに飛びつくことをやめた。もう歳だからというのもあるのだろうけど、わたしを労わるようになった。侑希さんがわたしを労わっているのを見たからか、本能的にそうしようと思ったのかは分からない。
最初のコメントを投稿しよう!