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「アイスココアSサイズです。お仕事頑張ってください」
会計を終えた守永さんに笑顔で渡すと、彼も笑顔で「ありがとう」と言って受け取った。
「さくらさんは今日、何時終わり?」
「早番なんで午後2時です」
「そっか。じゃあまた夜連絡する」
「はい。待ってます」
ヒラヒラと手を振ってお店から出て行く彼の背中を見つめていると、バックヤードから金髪ピアスの人が出てきた。見た目はチャラいが、我がコーヒーショップの店長で、高校の同級生の羽原君だ。
「あ、ココア王子、もう行った?」
「うん。さっき仕事に行ったよ」
「うわー遅かったか……」
羽原君はガシガシと金髪の頭を掻いた。
高校の頃バスケ部だった彼とは、同じ部活仲間だった。わたしはマネージャーとして、彼は選手としてお互いに高め合っていた関係だ。そんな彼と今は、店長と社員という関係になった。でも、そんな硬い感じじゃなく、もっとフランクな関係──いうなれば友だちである。
「守永さんになんか用事があったの?」
少し前まで、羽原君は守永さんに対して敵対心のようなものを持って接していたが、わたしが守永さんと付き合いだしてから、2人でよく話すようになった。何があったのかは分からないが、守永さん曰く「友だちになった」らしかった。
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