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花火大会
好きな人と結ばれて、お付き合いをするということを、わたしは24歳にして初めて経験している。
「さくらさん」
名前を呼ばれて顔を上げると、優しく微笑む彼が目の前にいて、それだけで胸がいっぱいになる。こういう現象を幸せと呼ぶのかと、らしくないことを思ったりもする。
「おはようございます、守永さん」
時刻は午前7時。東京都内の飛鷹総合病院1階にある、コーヒーテイクアウト専門店でわたしは働いていた。そこへ仕事の日は毎朝ココアを買いに来る放射線技師、守永侑希さんがいつものようにやって来た。この店舗はSサイズのココアが通常1杯150円のところ、朝6時~10時まで限定で100円で買える。その時間帯を狙って守永さんはやって来る。彼はわたしより2歳年上だが、見た目は中学生に見える程童顔なアイドル顔をしており、身長も160センチのわたしとあまり変わらない。性格は穏やかで、チャームポイントは笑った時にできる右頬のえくぼ。いつもアイドルのようにキラキラしていて、他の従業員からは『ココア王子』と呼ばれている。
ただ、わたし以外の女性と接することが苦手なようで、よくしどろもどろになって会話している様子も見られる。
色々あって仲良くなったそんな彼に、「好きです」と告白されたのは先月の話で、付き合い始めて1ヶ月が経った。わたしにとっては全てが初めてで、毎日が新鮮で、少し眩しい。
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