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唇を覆う、心地良い感覚に、都(みやこ)はとろんと目を開いた。 ああ、ここは何処だろう。 時代錯誤の鏡張りの天井には、スーツを乱した自分が映った。今日は部署を跨いだ飲み会があるからと、気合いをいれて着たはずなのに。 (あー、一張羅(いっちょうら)がシワになる) 上着は何処へ行ったのだろう。 ブラウスのボタンは八割ほど外れ、裾はウエストから飛び出しており、お腹が見えてしまっていた。無駄に気合いを入れて着ていた、鮮やな発色の下着が丸見えである。 スカートは捲れ上がり、腿まで見えてしまっている。ストッキングは模様だと言えるほど、大きな水玉模様がいくつも出来ていた。もうこれは廃棄決定だ。 そして、そんな都子には、男がのしかかっていた。 男は足で都子の膝を割り、ウエストから指を差し入れ肌を撫でる。吸い付く肌を堪能すると、そのまま胸を揉みしだいた。唇の隙間からは舌が差し込まれる。 (男が……男ーーーーーーーー?!) 「んん?!」 そこでやっと都子は、虚ろだった目を見開いた。と言っても、宵が覚めたわけでもない。 血中アルコール濃度はそうそう簡単に下がるわけでもなく、男を押し退けようとした腕は力が入らずに、へろんと男の胸を撫でただけだった。 「みゃーちゃんが酔うと、こんなにエロイなんて知らなかったよ。まぁ俺も君のことは嫌いじゃないし、据え膳食わぬは男の恥っていうしさ。セックスくらいならいくらでも受けてたちますよ。けっこう、おっぱいおっきかったんだねぇー。マシュマロみたいにふわふわだよ」 男は都子の抵抗など無視をして、胸に頬を寄せる。 都子の攻防を軽やかにすりぬけ、尖らせた唇を、何度も押しつけながら喋るのは、行きずりの男でも、今日狙っていた、社のアイドル友坂(ともさか)でもない。
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