行きつけの地下一階

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 職場から徒歩十分の小さなビルで、仕事帰りに一杯やるのが毎週金曜日の楽しみになっている。ビル自体は普通だが、地下一階だけは例外だ。フロアの入口ドアを開けるまで、どんな店があるか分からない。先月来たときは、色鮮やかな魚の刺身を出す居酒屋だったし、二週間前はピアノの生演奏が流れるシックなバーだった。驚いたことに、ファンタジー小説に登場するような酒場だったこともある。武器や防具を身にまとった人々や美しいエルフ、髭もじゃのドワーフに交じって、スーツ姿でひとり、ジョッキを傾けるのも悪くなかった。現実世界から異世界まで、多種多様な店を楽しめるのがここの良いところだ。  さて、今日はどんな店に出会えるだろう。
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