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「麗花、稔と別れたの?」
高校時代に最も仲良くしていた友人、羽田深雪はそう言って、私の顔を覗き込んでくる。
「そうだよ。もう荷物も引き上げてきた」
私はあくまで強気で、稔が全て悪いということを前提で話をした。金銭面で揉めていたという話はおくびにも出さなかった。深雪は何度か稔とも会ったことがあって、私も話題に出すことが多かったのでよく知っている。
「好きな人って誰よ? 会社の子とか?」
深雪は美容関係の専門学校に通っている。いつも頭から足の爪先まで隙のない出で立ちをしているため、会うためには私も気合いを入れなければならない。
「そこまでは聞いてないよ。もうどうでもいい」
私はそう言ってアイスティーを飲む。本当はミルクや砂糖を入れて飲みたいけれど、太るのだけは勘弁だ。逆に深雪は食べても太らない体質なので、カフェオレを飲みつつ、パフェをつついている。
「まあ、あれだよ。麗花にはもっといい男がいるって。稔ってなんかさ、イケてるの気取ってたけど、キョロ充気味だったじゃん。出っ歯だし」
深雪の言葉に私達は大声を出して笑い、近くのテーブルに座っている客の視線が集まる。そうだ、こういう感じ。私はいつだって無敵なのだ。だから、稔と別れたこと、どうということはない。
一つ恋が終わったら、新しい恋を始めればいいだけの話なのだ。私は深雪と話したおかげか、来たときよりも幾分かすっきりとした気持ちで店を出て、この後予定があるという深雪と別れた。
さて、誰と恋をしようか。
そう考えて真っ先に思いついたのが、神崎だった。一度話しただけのスーツの男。少しおっちょこちょいそうだけれど、どこか憎めない雰囲気を持っていて、悪くない。
明日はとりあえず何の服を着ていこうか、せっかく神崎に声をかけるとしたら、やはり派手すぎない服装がいい。私はそう決心し歩き出した。
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