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驚きの表情を浮かべる和歌の周りを三人がパッと取り囲むと、一緒に食べていた香奈美も固まったまま動けなくなる。
「急に押しかけてごめんね。あなたのお名前を聞いてもいいかな?」
木乃香が両手を合わせながら声をかけると、和歌はハッと我に返る。
「あっ、三池和歌です」
「和歌ちゃんか。じゃあ和歌ちゃんに質問なんだけど、何か得意なハンドメイドってある?」
ハンドメイドという言葉を聞いた瞬間、和歌の顔が真っ赤に染まり、瞳がキラキラと輝き出す。それを見て、三人の中でこの子で間違いないという確信が生まれる。
和歌はもじもじしながら口を開いた。
「あの……あまり上手じゃないけど、刺繍が好きです」
その言葉を聞いた三人は、驚きと喜びのあまり天を仰ぐ。やっぱり間違ってなかったんだ。新しいハンドメイド仲間に出会えたことが、三人を大いに喜ばせた。
「やっぱり。新スキルを持つ女子を発見」
「ねぇねぇ、入る部活って決めた?」
「い、いえ……まだ考え中で……」
「じゃあさ、今日の放課後、ソーイング部の見学に来ない? 和歌ちゃんの刺繍とか見せてもらえたら嬉しいんだけど」
美晴が笑顔で話しかけると、和歌はどこか戸惑ったように香奈美の顔を見る。一人では不安なのかもしれないと悟った三人は、香奈美にも微笑みかける。
「無理にとは言わないからさ、見るだけっていうか、ちょっとお喋りとかしない? ちなみに私は洋裁、こんちゃんは和裁、ひーちゃんはビーズ系が得意なんだ。何かやりたいのがあったら教えられるし」
和歌は黙ったまま、とりあえず頷く。その時、教室に高丘先生が入ってきて、怪訝そうな表情を浮かべる。
「なんでお前たちが中学の校舎にいるんだ?」
「えっ、ハンドメイド部の勧誘」
「お前ら……勧誘は禁止だって約束じゃなかったか?」
「えっ、そうだっけ?」
「いや、覚えてないな」
「もういいから、教室に戻りなさい」
「はーい。じゃあ和歌ちゃん、家庭科準備室1で待ってるからね〜」
追い出されるように三人の先輩がいなくなり、クラスは先ほどまでの静けさを取り戻した。
なんて賑やかな先輩達だろう……お喋りは楽しかったけど、まだ不安は拭いきれない。
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