2 穂波(中二)の場合

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「ハンドメイド部って興味ない?」 「編み物が出来る人、大歓迎。みんな苦手だもんね」 「良かったら考えてみてくれない? 私たち、来週までは毎日家庭科準備室にいるから、良かったら見学に来て欲しいなぁ」  まさかハンドメイド部に勧誘されると思っていなかった穂波は呆然とする。 「得意なものはなんでもいいんだ。私は洋裁、こんちゃんは和裁、ひーちゃんはビーズ細工、わかぱんは刺繍が好きで、お互いの好きなことをやれたらって思ってる。強制ではないし、みんなで好きなことについてお喋りしながら楽しくやりたいねって感じなんだ。でも来てくれたら嬉しいな」  好きなことについて……確かに自分の好きなことを主張したことはないし、作ったものを仲良しの友達にあげたりはしたけど、それ以上のことはなかった。  だってあまり話して引かれたら嫌だし、意味わからないって言われたら寂しいし。  放送部も仲良しの子が入ったからついて行っただけ。楽しかったけど、やりたいことかと言われれば違うのかもしれない。  穂波は口を閉ざして悩む。その時、背の高い先輩が穂波のペンケースを見て目を見開いた。 「あなた……これはあの2.5次元俳優達のコンサート会場限定品ペンケースじゃない……!」  それを聞いて驚いたのは穂波も同じだった。まさかこのペンケースについて知っている人がいるなんて思わなかった。 「ご、ご存知なんですか?」 「……何日目が当たったの?」  衝撃的な質問だった。と聞いてくるということは、これが、行われたことを知っているのだ。 「初日です」  すると背の高い先輩が悔しそうな顔をする。 「私は千秋楽。残念〜。会場では会ってなかったんだ」  他の三人には伝わらない内容でありながらも、二人は何か通じ合うものがあったらしく、お互いに目を輝かせている。 「わかりました。入ります、ハンドメイド部」 「ありがとう!」  手を取り合う二人を見ながら首を傾げた三人は、とりあえず部員が増えたことに両手を上げるのだった。
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