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3 睦月(高1)の場合
この学校を受験することを決めたのは、卒業も考え始める二月に入ってからだった。
というのも、私はクラスの女子と喧嘩になり、険悪な関係になってしまったのだ。進学を考えていた学校がその女子と同じだったのが運の尽き。もし高校に進学してからも諍いが絶えなかったら、苦痛の三年間になりかねない。
だからと言って、どうして私が受験校を変えなきゃいけないのよ。レベルを落とすことになったし、ましてや女子校。ここしか受けられる学校がなかったから仕方ないけど、上手くやっていく自信なんて毛頭なかった。
それもこれも全部あの女のせいよ。いつ私が男子に媚を売ってた? あいつの悪口を言った? 有る事無い事、出まかせばっかり口にして……。
でももう入学したんだし、諦めよう。勉強だけやって、あとは黙って三年間を過ごせばいい。そう思っていた。
だけど私の考えは裏切られることになる。この学校が、こんな場所だなんて知らなかったから。
私は女子校……いや、この学校の実態を知らなかった。知っているのは偏差値と学校の場所と制服くらいだろうか。
学校生活が始まって一週間が過ぎ、クラスのある人物の言動が気になって仕方なかった。
大岸日和。附属中からの持ち上がり組だが、壁を作ろうとせず、スムーズにクラスに馴染んでいる。私とは真逆のタイプに見えた。
体育が終わってクラスに戻れば、わざと教室の鍵をかけ、
「着替え中だから待ってくださーい」
と、次の授業の先生を廊下で五分待たせ、始業を遅らせるという荒技。
ノリの良い先生には、
「先生の若い頃の話が聞きたいなぁ」
と話題を誘導し、一時間教師の青春の話で終わったこともある。
はっきり言って、意味がわからなかった。こんなクラスはもちろん、こんなタイプの人間は中学にはいなかった。
でも最近、面白がっている自分がいることに気付いた。ふざけるのとは違う、真剣な怠け方を肌で実感している。
彼女と話したことはないけど、客観的に見ていて、退屈はしなかった。
おかしいな……あんなに嫌々入学したのに、今はそれほど嫌じゃない。
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