23人が本棚に入れています
本棚に追加
4 予選準備開始!
ハンドメイド甲子園へのエントリーも済ませ、ハンドメイド部が部として認められてから一週間が経った頃。顧問の竹代先生から部員全員に招集がかかったのだ。
放課後になり、いつもよりソワソワしながら家庭科準備室に向かう。美晴と木乃香が部屋に入ると、竹代先生が椅子に座って待っていた。その後に和歌と穂波が、それからすぐに日和と睦月も到着したところで、竹代先生は手に持っていた水色の封筒を製作台の上に置いた。封筒の下の方には【手芸用品専門店 クラフトン】の文字が書かれている。
「今日ハンドメイド甲子園の事業部から届いたわよ」
美晴は封筒に飛びつく。
「わっ、開けていい?」
興奮しながら美晴が尋ねると、竹代先生は無言のまま頷く。
「たぶん予選の要項でしょうね」
「……なんか結構厚みがあるね」
カバンから布製のペンケースを取り出し、ハサミで封筒を開けていく。その様子を他の部員たちも見守る。
美晴が封筒の中に入っていたものを取り出す。竹代先生が言っていたように、中には一次予選の要項と型紙が入っていた。
「あっ、この型紙ってクラフトンのオリジナルのやつじゃない? よくお店で見るよね」
「だね。かなりお安くて助かってるやつだ」
美晴と木乃香が顔を合わせて言うものの、ほかの部員たちはキョトンとしたまま座っている。
「ほら、ばりちゃんとこんちゃんは服とか作るけど、私らはほぼ小物作りだからさ。型紙なんて買ったことないよ」
「ですね。服は作るより買う派なんで」
日和と睦月の言葉に、二人は納得したように手を叩いた。その時、竹代先生が口を開く。
「何の型紙?」
「えっとね……あぁ、子供用の赤ずきんちゃんの衣装の型紙だって」
「赤ずきんちゃん?」
「そう。ハロウィンとかで着るのかな。ケープ、ワンピース、エプロンの型紙が入っているみたいだよ」
美晴から型紙が入った袋を受け取った日和は、中に入っていた型紙を全て取り出す。すると作り方の説明とともに、小さく畳まれた大きな紙が二枚出てくる。
「これを型紙通りに作れってことですか? だとしたらばりちゃん先輩だけで作れちゃいそうですよね」
「まぁ確かにね」
しかしその横で応募要項に目を通していた竹代先生は、目を細めて文章を追いながら、
「なるほど」
と口にした。
「あのね、こう書いてあるわよ。『型紙を使っての製作、作品の完成度の美しさ、それぞれの学生によるオリジナリティの追加が評価対象となります。ハンドメイドであれば、つかう素材は何でも構いません。』」
「……ってことは、ただ作るだけじゃダメってことだね」
「『締め切りはこの型紙が到着後一週間です。尚、当日消印有効とさせていただきます。皆様の力作を、心よりお待ちしております』」
竹代先生が読み終えると同時に、全員の悲鳴が響き渡る。
「一週間? 無理じゃない?」
日和が慌てふためき、睦月は凍りつく。和歌は青ざめ、穂波は頭を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!