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駅前のビルの二階にあるクラフトンは、系列店の中でも規模が大きい店舗だった。
六人は色味や素材について話し合いながら、必要なものを調達をしていく。しかし和歌と穂波は
高校生の言葉に相槌を打つばかりで、なかなか意見を言おうとはしない。
美晴はその事が少し気になっていた。
やっぱり年上には言い難いのかな。確かに仲間になって一か月半。打ち解けるにはまだ早いかもしれない。それでも、もう少し心を開いて欲しいと思っていた。
でも二人は周りにすごく気を遣うタイプであることはわかっている。その辺りは高校生四人の方が緩い部分があるかもしれない。だからこそ私たちはもっと甘えてくれて良いのにな……。
会計を終えた美晴は、後ろを歩いていた和歌と穂波を振り返る。
「あのね、ほなみん、わかぱん、私たちにもっと甘えていいんだからね」
二人はキョトンとした顔で美晴を見ており、他の三人はその様子をただ見守っていた。
「きっと年上だから我慢しているところもあると言う。でも言いたいことは遠慮しなくていいんだよ。なんて言うかさ、私たちは二人のことを妹みたいな感じだと思っているんだ。だから、どんと甘えてくれて良いんだからね」
すると木乃香もそう感じていたのか、美晴の言葉に頷くと、二人の肩をポンっと叩く。
「そうそう。先輩後輩っていうよりは、姉妹くらいの距離感の方がいいよね。それに専門分野はみんな違うから、お互いがお互いの先生みたいなものだし」
「わかぱんとほなみんは、どこかで『これ以上話したら嫌われるかもしれない』っていうふうに思ってるでしょ? でもね、そう思って話しているっていう時点で、周りに気を遣っている証拠だと思うよ」
日和も続ける。三人の言葉を聞いた和歌と穂波は顔を見合わせる。きっと心を見透かされたのだろう。眉根を寄せ、困ったような顔になっていた。
「すみません……まだ先輩たちとの距離感がよくわからなくて……」
「いいんだよ。少しずつで大丈夫だからさ。壁をもっと取っ払っていこう」
「これ以上壁がなくなったら、ばりちゃんの場合至近距離だけどね」
「あら、仲良しでいいじゃない」
ようやく和歌と穂波の表紙が柔らかくなったような気がした。美晴はそれが嬉しくて胸が熱くなる。
「よしっ、じゃあ今日は私が今川焼きを奢ってあげよう!」
六人は楽しそうに笑い合い、フードコートに向かって歩き出した。
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