4 予選準備開始!

5/10
前へ
/47ページ
次へ
* * * *  翌日の放課後から本格的に衣装作りが始まった。いつもなら家庭科準備室で細かい作業をしていたが、今回は大かがりな制作になるため、竹代先生が被服室の鍵を貸してくれたのだ。  そのため、広々としたスペースで作業に臨む事が出来た。  美晴は昨日購入したものを袋から出し、それぞれが必要なものを手に取っていく。日和はクラフトコード、睦月は羊毛、和歌と穂波は刺繍糸。木乃香はハギレの布と発泡スチロールの球、花用の針金を取ると、残った布を美晴が自分の方へ引き寄せる。 「こんちゃんとひーちゃんとむっちゃんは、子どもが手に持つサイズ感を考えながら作ってくれる?」 「了解。だとするとあまり大きくない方がいいね」 「ひーちゃんのカゴに合わせて、私たちのサイズも考えようか」  三人が話しながら、美晴達の隣の作業台に流れていく。そして残された和歌と穂波は、美晴の指示を待っていた。 「よし、じゃあ私たちは衣装作りに入るよ。まずほなみんね」 「はーい」 「とりあえず必要なレースは二メートルくらい。そんなに大きな花じゃなくていいよ。出来そう?」 「うん、大丈夫です」 「でね、悩んだんだけど、先にケープを作っちゃってから、後でこんちゃんに縫い付けてもらおうかと思って。手縫いならこんちゃん大得意だから」  美晴がそう言うと、隣りのテーブルから木乃香が手を振ったので、穂波も刺繍糸を持ってその中へ入っていった。  その姿を確認してから和歌の方を向く。 「エプロンの刺繍に関しては、やっぱり縫い目を隠した方がキレイな仕上がりになると思うんだ。前掛け部分の布を裁断してからわかぱんに渡すから、刺繍を先にしてくれる? それが出来たらエプロンに仕立てよう」 「了解です」  美晴は和歌の目の前で布を広げると、持ち帰って切り抜いてきたらしい型紙を並べ始める。布と型紙の上に重石を乗せ、チャコペンで型紙の枠をなぞっていく。 「まち針じゃないんですね」  和歌が布の上の重石を指差して尋ねると、美晴はにっこり微笑んだ。 「まち針だと布が引っ張られちゃうし、正確な線が書けないんだよね」 「なるほど」  美晴が書いた線に沿って布を裁断していくのを、和歌はワクワクしながら見つめていた。  なんて滑らかな動きなんだろ……私だったら切ることに緊張しちゃって、断面がガタガタしちゃうもの。やっぱりばりちゃん先輩はすごいなぁ。  
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加