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翌日の放課後から本格的に衣装作りが始まった。いつもなら家庭科準備室で細かい作業をしていたが、今回は大かがりな制作になるため、竹代先生が被服室の鍵を貸してくれたのだ。
そのため、広々としたスペースで作業に臨む事が出来た。
美晴は昨日購入したものを袋から出し、それぞれが必要なものを手に取っていく。日和はクラフトコード、睦月は羊毛、和歌と穂波は刺繍糸。木乃香はハギレの布と発泡スチロールの球、花用の針金を取ると、残った布を美晴が自分の方へ引き寄せる。
「こんちゃんとひーちゃんとむっちゃんは、子どもが手に持つサイズ感を考えながら作ってくれる?」
「了解。だとするとあまり大きくない方がいいね」
「ひーちゃんのカゴに合わせて、私たちのサイズも考えようか」
三人が話しながら、美晴達の隣の作業台に流れていく。そして残された和歌と穂波は、美晴の指示を待っていた。
「よし、じゃあ私たちは衣装作りに入るよ。まずほなみんね」
「はーい」
「とりあえず必要なレースは二メートルくらい。そんなに大きな花じゃなくていいよ。出来そう?」
「うん、大丈夫です」
「でね、悩んだんだけど、先にケープを作っちゃってから、後でこんちゃんに縫い付けてもらおうかと思って。手縫いならこんちゃん大得意だから」
美晴がそう言うと、隣りのテーブルから木乃香が手を振ったので、穂波も刺繍糸を持ってその中へ入っていった。
その姿を確認してから和歌の方を向く。
「エプロンの刺繍に関しては、やっぱり縫い目を隠した方がキレイな仕上がりになると思うんだ。前掛け部分の布を裁断してからわかぱんに渡すから、刺繍を先にしてくれる? それが出来たらエプロンに仕立てよう」
「了解です」
美晴は和歌の目の前で布を広げると、持ち帰って切り抜いてきたらしい型紙を並べ始める。布と型紙の上に重石を乗せ、チャコペンで型紙の枠をなぞっていく。
「まち針じゃないんですね」
和歌が布の上の重石を指差して尋ねると、美晴はにっこり微笑んだ。
「まち針だと布が引っ張られちゃうし、正確な線が書けないんだよね」
「なるほど」
美晴が書いた線に沿って布を裁断していくのを、和歌はワクワクしながら見つめていた。
なんて滑らかな動きなんだろ……私だったら切ることに緊張しちゃって、断面がガタガタしちゃうもの。やっぱりばりちゃん先輩はすごいなぁ。
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