何故

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何故

「成程、そう言う話をしたんだな。」 「はい。」 私は迷ったが結局、警部にエグゼとの会話の内容を全て話した。 「この話を聞いてお前はどう思った?」 警部が私に聞いてくる。 「にわかには信じられませんが…全てが噓という感じではありませんでした。」 私は正直な感想を述べる。悪魔などは信じられないが奴が言ったセリフ “もう時間が無いんだ。このままだと、どのみち山本 久留実は死ぬ。” あのセリフは真剣そのものだった。 「そうか。で、どうする?本当に手を引くか?」 「まさか。そんなこと言われたらますます我々で解決しなければなりません。」 警部の言葉に私は胸を張って答える。 フッと警部は笑い 「よしっ、あいつの言うことが本当なら、このまま山本 久留実を張り込むのがいいな。今はそれしか手がかりがない。行くぞ。」 「はいっ!!!」 私達は再び山本 久留実の自宅に向かう。  それから私達が山本 久留実の家を張り込んでから3日が経とうとしていた。 「出てきたぞ。」 警部がボソッと呟く。自宅から山本 久留実が出てくる。どこかのパーティーに呼ばれたのだろうか、前会った時とは違って化粧をちゃんとしている。その姿は見違える程に綺麗だった。  私達が山本 久留実の後を追おうとした時 「失礼、犬飼警部と鞘野巡査部長ですね。」 2人の男が声をかけてきた。 「何だ、お前らは。」 警部が追跡の邪魔されたことにイラつきながら答える。 「私ども岩本警視正からの伝言を預かっており、それをお伝えに参りました。」 「あっ?そんなの無線とかで言えよ。こっちは急いでるんだ。」 警部は益々イラつきながら答える。 「いえ、直接言って、その後、警視庁まで連れ戻すようにと言われてますので。」 「何っ?どういうことだ」 男の言葉に初めて警部が男たちのほうに振り返る。 「岩本警視正の伝言です。“この事件の捜査は打ち切りとする”とのことです。」 「なんだとっ!!!」 警部が叫ぶ。 「あの、どういうことでしょうか?詳しい説明を求めます。」 私も驚いて質問をする。 「私どもも詳しいことは存じ上げていません。では、警視庁までお送りします。」 「ふざけるなっ!!!」 警部が男の胸倉を掴む。そんな警部に怯むことなく男は続ける。 「詳しい話は警視庁で警視正にお聞きください。」 男はそう淡々と言うと私達を車まで誘導する。  私は無視して後ろを振り返り山本 久留実を追おうとする。しかし、そこには山本 久留実の姿は無かった。 「どういうことだっ!!!テメェ!!!」 「言ったまんまだ、この事件の捜査は打ち切りにする。君達はもう通常の業務に戻っていいぞ。」 怒り狂う警部とは対象に涼しげな顔で告げる警視正。 「私も納得がいきません。どうしてこうも急に操作を打ち切りに?」 私も抗議の声を上げる。 「証拠もろくにつかめずにいる。犯人の動機も分からない。これ以上捜査に時間を費やすのは無駄だからよ。巡査部長。」 「安心しろよ、俺達は暇だからよ、捜査する時間は幾らでもある。」 警部が噛みつくように言う。 「君達には時間があるかもしれないが、鑑識官などは暇じゃないんだよ。さぁ、この事件の話はもう終わりだ。二人ともご苦労だった。」 そう言って警視正は私達を部屋から出るようにうながす。 「クソがっ!!!」 警部はそう吐き捨てると部屋のドアを乱暴に開け出て行ってしまった。 「失礼しました。」 一応上司なので私は敬礼をして部屋から出て行った。
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