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呼び出し
部屋に戻った私達には暗い雰囲気が漂う。
「これから、どうしましょう…」
「…」
あれから警部は黙ったまんまだ。一体どうしてしまったのだろうか。
そう思っていると警部は急に立ち上がった。
「警部?」
「悪い鞘野、今日はもう上がってくれ。」
「えっ、何故ですか?」
「いいから、今日はもう上がれ。安心しろ、明日は今日の分まで働いてもらうからな。」
「は、はぁ…」
理由は分からないが、警部はこうと決めたら梃子でも動かない。しぶしぶ私は帰宅の準備をする。
あれから電車に乗り、帰り道を歩いている。早く上がらせてもらったが周りは既に暗くなっていた。
そんな時、私の携帯が鳴る。見ると非通知からの電話だった。普段はそんな非通知からの着信には出ないのだが、何故か今回のは出てしまった。
「はい、もしもし?」
『こんな夜道に女の子が一人で歩くのは感心しないなぁ。』
「その声はっ」
『そう、エグゼさんだよ。おひさぁ~。綾香ちゃん元気してたぁ?』
とぼけたような声で答えが返ってくる。
「なんの用?」
『そんな怒んなって。実は相談があってな。今から指定する場所に来てくれねぇか?』
「この前、次会ったら殺すとか言ってなかった?」
『そう言われると返す言葉もねぇ。そんじゃあ、会わないどくか。』
「いえ、会うわ。何処に行けばいいの?」
慌てて言う私に
『そう来なくっちゃな』
エグゼは笑って答えた。ムカつく。
エグゼが指定した場所は私が居た場所から比較的近い廃墟だった。本当に私のことはお見通しらしい。私は警戒しながら廃墟の中に入る。
「よぉ、本当に来るとはな。」
そこにはエグゼが前と同じように古びたソファにふんぞり返っていた
「あんたが来なさいって言ったんでしょ。」
「一人で来いとは一言も言ってないぜ?」
うっ、それもそうだ。警部くらい応援に呼べばよかっただろうか。
「まっ、呼ばなくても来たみたいだがな。」
そう言ってエグゼは私の後ろに視線を向ける。
私もその視線の先に目を向けて驚いた。そこには
「やはりバレたか。勘の良い奴だ。」
犬飼警部がいたのだ。
「警部!!!何故ここに?」
驚く私に
「それはこっちのセリフだ。鞘野、何故こいつがいる場所にお前がいる。」
「そっ、それは…エ、エグゼなら何か事件について知っているのでは無いかと思って。」
「一人で行く必要があるか?」
私は言葉に詰まる。まずい、完全にグルだと思われている。私が何を言おうか悩んでいると
「ひでぇな。自分の部下がそんなに信用できないのか?」
エグゼがそんなことを言い出した。
「てめぇは黙ってろ。鞘野の次はテメェの尋問だから、その時に思いっきり喋らせてやるよ。」
凄みを利かせて警部は言う。そんな警部に構わずエグゼは続ける。
「これだからあんたとは話がしたくなかったんだよ。人の話を聞かずに、自分の価値観だけを押し付けて一方通行の会話しかしない。そんなんだから娘一人救えない。」
「っっ!!!」
エグゼの言葉を聞いた瞬間、警部の顔に見たことのない程の怒りの表情が現れる。
「テメェ!!!」
警部はそう言って懐から拳銃を取り出す。
「勝手に警視庁から銃持ち出すなよ。どうせ許可取ってねぇんだろ?」
澄ました声でエグゼが言う。
「うるせえ!!!」
バアーン
銃声が一発鳴り響く。
エグゼが後ろに吹っ飛び地面に倒れこんだ。
「警部!!!」
急いでエグゼに駆け寄り私は警部に向かって怒声を上げる。
「こんなやり方ではエグゼと一緒です!!!いいえっ、それよりも最低なんですよ!!!超えてはいけない一線を警部は今超えてしまったんですよ!!!警部!!!」
そんな時
「いや、アウトよりのセーフだな。ギリギリ超えてない。」
そんな呑気な声がした。
私は声のした方を振り向く。
「えっ、な、何で?」
そこにはケロリとした風にエグゼが座っていた。
「やっぱり死なねぇか…」
警部が呆れたように呟く。
「当たり前だろ、そんな玩具で死ぬわけねぇよ。」
エグゼは普通の顔でそう答える。普通死ぬのよっ。
安心した私はその場で泣き出しそうになってしまう。
「心配させないでよっ!!!」
「なに?綾香ちゃん、俺のこと心配してくれたの?俺ちゃん、嬉しい♡」
「ちっ違う、私は警部が殺人を犯したんじゃないかって心配したの!!!」
「またまた~ツンデレなんだからぁ。」
「うるさい!!」
私達の言い合いを見て警部が
「どうやら俺が来るのも計算の内だったみたいだな。」
そうエグゼに言う。
「そゆこと。」
自慢げにエグゼが言い
「何が目的だ?」
警部の問には
「それを今から話すんだよ。さて、役者は揃ったし、本題に入ろうか。」
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