協同

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 「てか、俺を逮捕しなくてもいいのか、おっさん。」 ソファに座り直したエグゼは警部にそう聞く。 「てめぇを逮捕するのはこの事件を解決してからだ。その後、署に来てもらう。」 そう答える警部に 「へぇ、意外と融通が利くんだな、おっさん。」 エグゼはニシシと笑う。 「それで?要件は何なの?」 話が進まないので私が強引に話に割って入る。 「わりぃ、わりぃ。話ってのはな、俺と手を組んでくれないかって話だ。」 エグゼの言葉に私は驚いた。 「それって協力して欲しいってこと?」 「う~ん、まぁ、正解。」 私の問いにエグゼは曖昧な答えで返す。 「別にお前らの力を借りなくてもいいんだが、ちょっと事情が変わってな。」 「事情?」 「その事情を教える前にお前ら、二人目の被害者が誰か知ってるか?」 エグゼの答えに私は首を横に振る。警部も 「俺も知らされてない。」 私達の答えを聞いてエグゼはふざけた様子で話し出した。。 「二人目の被害者はな、なんとびっくり、あの岩本 誠二の息子さんの“岩本 武(いわもと たける)”君だぁ。な、なんだってー」 「なんだと、あのドラ息子かっ!!!」 「それ本当!!!」 エグゼの小芝居は無視して私と警部は声を張り上げる。 「やっぱり知らされてなかったみたいだな。」 エグゼは私達の反応に満足そうだ。 「警部。警部は岩本警視正の息子さんはご存じだったのですか?」 「実際会ったことはないが、警視正の息子と言えば親の顔に泥を塗りたくってるって言われるくらいのドラ息子で警視庁内では有名だ。」 知らなかった。そんな噂があったとは。警部は言葉を続ける 「だが、益々分からん。何故息子が殺されたのにあの野郎は捜査を打ち切ったんだ?」 「そうですね、普通もっと力を入れて捜査を続行するはずですが…」 私は相槌を打つ。 「そりゃあ、あのジイさんにとってバカ息子はただのお荷物だからな。むしろ死んで済々したんじゃないねぇの?」 腕を頭の後ろに組み面白くなさそうにエグゼは言う。 「ちょっと。そんな言い方無いんじゃない?」 私はエグゼの言葉を嗜む。エグゼはそんな私の言葉に 「事実だよ。現にバカ息子の起こした事件をジイさんが何件揉み消したと思ってるんだ?」 と反論する。 「その話本当か?」 「ああ、マジさ。」 警部の言葉に食い気味に返すエグゼ。 「その揉み消した事件の内に今回の事件と通じる事件がある。」 その言葉を聞いた瞬間、私達に緊張が走る。 「事件が起こったのは今から7年前、場所は人目のつかない路地裏。帰宅途中のOLが男二人に車に引きずれこまれ拉致された。そして、男共はそのまま車で移動し廃墟にその女性を連れて行き、そのまま暴力、まぁ、いわゆるレイプってやつだな。」 そう話した後、エグゼはチラリと私の顔色を伺う。一応気を遣ってくれたのだろう。 「私は大丈夫。続けて。」 私の言葉にエグゼは頷き言葉を続ける。 「その行為を携帯で撮影し、女性を脅してその場から逃走。残された女性は携帯や財布その他諸々奪われた。その手際の良さから何回もその手口で女性を食い物にしてたんだろうな。しかし、その女性は脱がされた服を着ると近くの民家に助けを求めた。いつもは泣き寝入りする女性しかいなかったみたいだが、今回は違った。そのまま通報したんだ。犯人のクソ共はそこは計算外だったみたいだな。捜査すれば自分達がやったことはすぐに分かるから相当慌てただろうよ。だから、親のコネを使った。親もその条件を飲み、自分の地位を守って事件を無かったことにした。もう何が言いたいか分かるだろう?」 「…その犯人が今回殺された被害者の二人だった、って訳か。」 警部はそう静かに答える。 「そうだ。言葉を足せばそのクソ共の一人の親が岩本 誠二ってことだよ。」 私は言葉が出なかった。何という胸糞の悪い事件だ。しかも市民を守る立場にいる我々が、自分の地位を守る為に真実を捻じ曲げるとは。 「許せない…」 私は自身の体が怒りで震えるのが分かった。 「落ち着け、鞘野。怒りは周りを見えなくする。抑えろ。」 警部の声で私は深呼吸を繰り返す。 「それで?何でその事件と山本 久留実が関係あるんだ?」 私が怒りを抑えている間に警部がエグゼに問う。 「それは今から来る奴に聞こうぜ。」 「何っ?」 エグゼは警部にそう答えるとそれからは黙り込んでしまった。 しばらくすると 「来たぞ。」 エグゼが短くそう呟く。その言葉で私達は一斉に廃墟の入口へと目を向けた。そこに来たのは 「あら、その人達はあの時の刑事さん?」 山本 久留実だった。
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