全貌

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全貌

「今何て…」 「俺?俺は悪魔だ。」 「いや、そうじゃなくて。」 悪魔?悪魔だって。それが本当なら… 「お前も化け物ってことなのか?」 警部が私の聞きたいことを聞いてくれた。警戒しているのかいつでも拳銃を抜けるようにしている。 「オレ、トモダチ、コワクナイ」 何故か片言の日本語で味方だと示すエグゼ。 「まぁ、今は深くは聞かずに信じてやる。それより…」 警部は視線を山本 久留実に向ける。 「そんな…」 山本 久留実は絶望して様子で座り込んでいた。 「私は…私はどうすれば…どうやって姉さんの仇を取ればいいのよっ!!!」 俯いたまま山本 久留実はそう叫んだ。 「やっぱあの事件の被害者はあんたの家族だったか。」 エグゼが言う。 「良かったら話聞かせてもらえませんか?」 手錠を持って近づく警部を止めて、私は近づき跪いて声を掛ける。 「……いいわ、どうせもう全部終わりなんだし。全部話すわ。」 山本 久留実は覇気の無い声で語り始めた。  両親は私が12歳、私の姉 山本 亜香里(やまもと あかり)が15歳の時に他界したわ。私は両親の葬式で大泣きしてたけど姉は一切泣かなかった、唇を噛み締めて耐えていた。そこから私たちは親戚の間を転々とした。だから、私にとって姉は唯一頼れる存在になった。姉は誰にも頼らずに私を育ててくれた。何とか奨学金で高校まで行った姉はそのままOLになって私の学費などを稼いでくれた。お陰で無事に就職先にもありつけた。やっと姉に恩返しができる、そう思うと嬉しかった。そんな矢先だった、姉が襲われたのは。でも、姉は負けなかった。世間からの目も厳しくなるのは分かっていたはずなのに警察に通報したの。でも、警察は動いてくれなかった。警察が動かなかったせいで姉は周りから嘘つき呼ばわりまでされたわ。流石の姉も耐えられなかったのね。数日たった頃に首を吊って自殺した。私の目の前で。 そう語り終えた後、山本 久留実はフッと息を吐いた。 「だから、仇を討とうと思ったの。それが姉に出来る恩返しと考えたから。姉の無念を晴らすことが、それだけが出来ることと思ったから。」 そう言い終えると悲しそうな顔をして山本 久留実は黙ってしまった。 「だから、クロユリの花を咲かせたのか。」 エグゼが口を開く。 「えっ?クロユリと何の関係があるの?」 私が聞くと 「クロユリの花言葉に「復讐」「呪い」って意味があるんだよ。それともう1種類の花はブルースターだったか?」 「そうだったのね…。ねぇ、ブルースターの花言葉にはどんな意味があるの?」 「ブルースターの花言葉は「幸福な愛」「信じあう心」だったか?」 私の問いには警部が答えてくれた。警部の言葉に山本 久留実は頷く。 「何でブルースターを咲かせたんだ?そんな奴らに相応しくない無い花だと思うが。」 言葉を続ける警部に山本 久留実は 「姉さんの好きな花だった。姉さんに届くかと思って。」 そう呟く。 「そんなことしてもあなたのお姉さんは喜ばないと思うわよ。」 私の言葉に彼女は自称気味に笑いながら 「そうかもね…こんな事しても喜ばないかもね。でも、これしか思いつかなかった。こんな最低のやり方でしか恩返しが出来ないと思ったの。」 「そんなこと…」 私は言葉を続けれなかった。どれほどの葛藤が彼女の中であったかは私には計り知れない。そんな奴が彼女にどんな言葉を掛けてもただの戯言にしか聞こえないだろう。私が言葉に悩んでいると 「だからと言って、殺人を起こすのはやってはならんことだ。その時点でお前も奴らと同じ場所まで落ちたんだよ。他にもやり方はあったはずだ。」 警部が冷徹に言い放つ。 「警部。そんな言い方はあまりにも…」 「いいのよ。その刑事さんが言っていることは正しいんだから。私は悪魔に魂を売ったの。」 私が抗議の声を上げようとするのを彼女が遮る。そんな中、 「まぁ、安心しろよ。その仇、俺が取ってやるよ。」 突然声を上げたかと思えばエグゼは自分を指差しそう言い切った。
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