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真実
―場所は最初の殺人事件が起きた現場。あの廃墟になる。
コツコツコツコツ
革靴で歩く足音が聞こえる。
「あら、本当に一人で来たのね。」
山本 久留実はニコニコしながら来た人物に声を掛ける。
「そちらが指定してきたのだろう。一人で来いと」
そう言う人物に窓からの月明りの光が照らし出す。
そこに居たのは紛れもなく岩本 誠二警視正だった。
「それで、さっそく本題に入ってもらおうか。何故私を呼び出した?」
「この場所、なんでこの廃墟を待合場所にしたか分かる?」
岩本警視正の問いを山本 久留実は無視して質問する。
「そんなこと知らん!!!」
「知らないことないでしょう!!!」
岩本警視正の言葉にかぶせるように山本 久留実が叫ぶ。睨みつける山本 久留実から顔を背けながら
「本当に…本当に証拠を持っているのか。」
そんな岩本警視正に山本 久留実はUSBを手にもって見せる。岩本警視正の顔色が悪くなる。
「このUSBの中に証拠が全部揃ってるわ。その前に真実を全部言って。」
山本 久留実の言葉に岩本警視正は
「や…山本 亜香里の件だろう?やっ…やったのは私じゃない‼あ…あれは息子が勝手にやっただけなんだ。本当だ‼息子には私もウンザリしていたんだ。こ…殺してくれて済々
「私が聞きたいのはそのことじゃないわ。」
岩本警視正の言い訳に山本 久留実は冷たい声で遮った。その目はゴミを見るような目だった。
「私が聞きたいのはあなたが事実を隠蔽したかどうかよ。それだけ喋って。それ以上その汚れた口で私の姉の名前を出すんじゃない。」
冷たい声で言葉を続ける山本 久留実に岩本警視正は
「わ…分かった。」
そう言って
「た…確かに私、岩本 誠二は息子が起こした12年前の事件を隠蔽しました。ほ…他にも隠蔽した事件は何件かあります。」
声を震わせながらそう続けた。
「っつ…やっぱりあなたが‼」
激昂して山本 久留実が岩本警視正に一歩近づく。
「く…来るなっ!!!」
岩本警視正が後ずさりながら、懐から拳銃を取り出す。その行動に山本 久留実の動きが止まる。
「さ…さぁ、そのUSBを渡しなさい!!!」
拳銃を向けながら岩本警視正が手を出す。
「…チッ」
舌打ちをして山本 久留実はUSBを投げる。それを受け取ると岩本警視正は後ろに下がりながら出口に向かう。
「は~い、捕まえた♡」
その岩本警視正の後ろから気色悪い声がする。
「おいっ、気色悪いとか言うなっ!!!」
「だっ誰だ‼」
岩本警視正と気色悪い声を出した人物が同時に叫ぶ。
「おっお前は!!」
岩本警視正はその人物を見て驚愕の声を上げる。
「女性の悲しみに寄り添う男!!!エクセキューショナッ!!!」
そこにはビシッと効果音が聞こえるくらい綺麗にポーズを決めるエグゼの姿があった。
「何故貴様が此処にっ」
岩本警視正の言葉に
「悪がいる場所に俺は現れる。だから悪がいる此処に俺が現れるのは至って普通なことだが?」
「なっ」
エグゼのセリフに岩本警視正が動揺する。だが、直ぐに山本 久留実の方を向き
「あいつだ。あいつが今回の連続殺人の犯人なんだっ!!」
と言い指を指した。
「うん、知ってる。でも、あいつは後回しだ。」
「えっ」
エグゼの言葉に驚きの声を上げる岩本警視正。
「まずはお前だよ。ジイさん。」
「ヒイッ」
悲鳴を漏らす岩本警視正を捕まえ逃げられないようにするとエグゼはこちらに合図をする。その合図を見た私と警部は物陰から出て行く。
「き、君達は!!ちょ、丁度いい所に来た。さぁ、この二人を捕まえるんだっ。いや、応援を呼ぶんだ。」
何故私たちは此処にいるのかも疑問に思わない所をみるとかなり慌てているようだ。
「いや、まずはお前からだ、岩本 誠二。証拠隠滅罪の容疑だ。署までご同行願おう。」
警部の言葉にハッとした顔をした警視正は
「貴様らっ、図ったな!!」
怒りの形相に顔を歪める。
「さあな、とりあえず来い。お望み通り応援を呼んでやるよ。」
そう言ってエグゼから警視正を受け取ると手錠をかけて連行して連れて行く。
「はっ離せ。離したまえ!」
「さっさと歩け。」
そう言って警視正を連行していく警部の後ろ姿をエグゼは何故かずっと眺めていた。
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