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事件現場
現場は廃墟の一室だった。ブルーシートで覆われ、外から見えないようになっている。
「こりゃ、また派手にやったな…」
警部がそう呟く。
「これは…」
私は言葉を無くす。
そこには、壁に寄りかかるように座っている男の惨たらしい姿があった。
男の遺体にはまず、手足が無かった。手は肩から下が、足は太ももの下から切り落とされており、代わりに、その切り落とさた四肢の切口には大量の花が詰め込まれていた。
「おい、見てみろ。こいつの目ん玉、えぐり取られてやがる。」
四肢ばかりに目が行っていたが被害者の目のあるはずべき場所にも花が詰まれていた。
「うっ」
私は思わずその場でえずいてしまった。
「吐くなら遠くで吐けよ。」
警部はそう声を掛ける。そんな時
「おやおや、誰かと思えば綾香君じゃないか。」
聞き覚えのある憎たらしい声が後ろから聞こえる。
「お久しぶりです、クソ…葛谷さん。」
この人は私が捜査一課に居たときの元上司の葛谷(くずたに) 勝(まさる)。いつも部下を下にみて、偉そうにしている。雑用は全部部下に押し付け、手柄を全部奪っていく。正直私の嫌いなタイプの人間だ。
「今、クソって言ったよね?」
「言ってませんよ、クソ谷さん。」
「言ってんじゃねーか!!なめてんのかテメェ!!」
クソ谷と言い合いをしてると
「テメェら!!!現場で言い争い何かしてんじゃねぇよ!!!喧嘩なら他所でやれっ!!!」
警部から怒られてしまった。
「申し訳ございません。警部」
「ったく。おい、そこのお前、事件の詳細を教えろ。」
警部はクソ谷にそう言い捨てる。
「ああ?誰に向かって口…」
「さっさと言えっ!!!」
警部の怒声にビビったクソ谷は慌てて事件の詳細を話し始める。いい気味だ。
「事件が分かったのは今日の朝早く。110番で『人が死んでいる』と電話がかかってきたらしい。現場に着いたときは既に男はこの姿で亡くなっていた。死因は多量出血によるショック死。死後は数時間だと思われる。電話を掛けてきた第一発見者はその場にはいなかった。」
「じゃあ、電話した本人が第一容疑者ってことだな。」
「そうだよ。」
警部の質問に葛谷は忌々しげに答える。
「それじゃあ、後は頼んだよ。俺は他の事で忙しいんでな。特殊・特別捜査一課は暇そうで羨ましいよ。」
そう嫌味を言って葛谷は去っていった。
「でも、おかしくないですか?猟奇殺人ではありますが、殺人の線でいくと捜査するのか捜査一課の役目だと思うんですが。」
「いや、この事件は俺ら向きだよ。」
警部はそう言って
「見てみろ、この花。詰め込まれてるんじゃねぇ、体の中から生えて来てるんだ。」
「まさか、そんな。」
私は再び男の遺体に目を向ける。よく見ると、確かに遺体の内部から花は咲き誇っていた。
「確かに体から咲いている…一体どうやって…」
「それを調べるのが俺らの仕事だろ。行くぞ。」
「えっ」
「何ボーっとしてんだ、さっさと聞き込み行くぞ。」
「は、はいっ。」
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