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聞き込み
それから私達は周りの住宅街に住む人達に聞き込みを開始した。しかし、ほとんどの住人が「知らない。」「寝てた。」と言い、これといった成果は出なかった。
「殺害されたのが、昨日の真夜中から今日の朝方にかけてだ。目撃者が少ないの想定内だな。」
警部はそう言いながら煙草を吸おうとする。
「禁煙」
私が呟くと、警部は不満そうに煙草を消す。そして、
「今度は廃墟周辺の聞き込みに行くぞ。」
警部はそう言い歩き出した。
「待ってください、警部。廃墟周辺の住人の聞き込みは既に終えたはずでは?」
私はそう呼び止める。
「俺らが聞き込みに行くのはもっと優秀な奴らさ。」
警部はそう言ってニヤリと笑う。
警部はその“優秀な奴ら”に会いに行く前に、コンビニで大量に弁当を買い込んできた。
「本当に何処の誰に会いに行くんですか?」
「まぁ、黙って付いてこい。直ぐに分かるさ。」
警部は目的地を全然教えてくれない。
そうして移動すること数十分、着いた場所は
「ここって…」
「ああ、こいつらが優秀な奴らさ。」
警部が言う優秀な奴らと言うのはホームレス達のことだった。警部はホームレスの一人一人に弁当を渡しながら、聞き込みを開始した。慌てて私も後に続く。
一通り聞き込みを続け、最後の一人に弁当を渡し、警部は聞き込みを始める。
「昨日の深夜から今日の朝方にかけて、何か不審な人物を見なかったか?」
「うん?うーん、どうだったかなぁ。」
しばらくそのホームレスは考え
「あっ、思い出した。その廃墟からフードを被った奴が出てくるのを見たぞ。」
「何っ!!それは本当かっ!!そいつを見たのは何時ごろだった‼」
警部が詰め寄る。
「あ、ああ、本当だよ。確か、朝方に缶拾いをしてた時に出てくるのを見たよ。」
「特徴とか分かるか?」
「え、ええと、身長は180cm位あったかな。とりあえず遠くから見ても、かなり身長が高いのが分かったよ。あれは、たぶん男だな。でも、他のことは分からないよ。フードで顔が見えなかったんだ。悪いけどそれだけしか…」
「いや、ありがとう。助かったよ」
警部は礼を言い立ち去っていく。私は
「収穫はありましたが、あれだけだと絞り込むのは難しいですね…」
「そうだな…」
その時
「ちょっと待ってくれよ、刑事さん達。」
さっきのホームレスが後ろから走って追いかけてきた。
「どうした。」
「一つ思い出したことがあるんだ。あの姿、あいつにそっくりだったよ。あの、何だったかな?最近よく新聞に載ってる奴だよ。」
「その人ってまさかこんな姿でしたか?」
私はスマホから、ネットに上がっているエクセキューショナーの写真を見せる。
「そう、そいつの姿にそっくりだった‼」
私と警部は顔を見合わせた。
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