容疑者

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容疑者

「あの野郎、遂にやりやがったか。」 警部は怒りで顔をゆがませながら呟く。 「そう断定するのは些か早いかもしれません。エクセキューショナーの恰好をした別人の可能性もあります。」 「だからどうしたっ!!どのみちあいつは捕まえなきゃならねぇ!!それに第一容疑者なのにも変わりはねぇ!!」 「それはそうですが…」 そんな話をしている時 「警部、亡くなった被害者の身元が分かりました。」 書類を持って鑑識がやってきた。さっきの会話を聞いていたのだろう。少し気まずそうな顔をしている。そんな鑑識から警部は書類を受け取り 「おう、ありがとな。もう行っていいぞ。」 そう言って書類に目を通し始める。 「し、失礼しました。」 鑑識はそう言って部屋を去っていった。 しばらくして、書類を読み終えた警部は 「お前も見とけ。」 そう言って書類を渡してきた。 渡せられた書類を読むと、そこには被害者の肩書きが載っていた。 “名前:久保田(くぼた) 博之(ひろゆき) 年齢:28歳 職:フリーター ・・・・・・・・” 至って普通の肩書きだ。これと言って怪しいところは無い。 「あまり、変わったことは無いですね。」 「そいつは前科が無いんだ。」 「えっ?」 「そいつには前科が無いんだ。なのに、あいつは殺りやがったんだ。」 「警部?」 「何故殺したんだ?今まで殺しはしてこなかったのに。しかも、こいつは前科が無いんだ。なのに何故…」 警部がぶつぶつと呟きだす。 「警部?警部!!」 私は警部に少し大きな声で呼びかける。 「あっ、ああ、すまない。何か言ったか?」 「いえ、ただ警部の様子がおかしくて…」 「そうか…悪かった。」 警部は一息ついて 「綾香、これからはエクセキューショナーを第一容疑者として動くぞ。いいな。」 どうやらいつもの警部に戻ったらしい。 「はい、分かりました。」 それから私達はエクセキューショナーに救われたと言う人達に聞き込みをすることにした。
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