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悪魔
驚きで言葉が出ない私を放ってエグゼは言葉を続ける。
「実際には山本 久留実じゃなくて、山本 久留実が契約した悪魔だな。」
はっ?悪魔?何を言ってるの、こいつは?
「そんな顔すんなよ。信じれないのは分かるが、まぁ、話を聞けよ。」
そういってエグゼは話を続ける。
「あの死体の殺され方を見ると、ありゃ植物の悪魔だな。山本 久留実は植物の悪魔と契約でもしたんだろう。それで、その悪魔に殺しを願ったんだろうな。まあ、代償は多分自分の命とかだろうよ。ここまで分かったか?」
ペラペラと意味不明の言葉を発する黒い奴に頭が痛くなってきた。
「あなた、気は確かなの?」
私は思わず確認する。
「いや、気は狂ってる。でも、今の話は本当だ。」
いや、どっちだよ。
「じゃあ、聞くがよ、体から生えた花の説明はどうやってするんだ?現実的には無理だろう?」
「そ、それは…」
そこは確かにまだ説明ができない、痛いところを突かれた。
「そんな困っているお前に、ここで俺からの提案と言うか…お願いと言うか…」
エグゼがもじもじして何か言おうとしてると思うと、
「命令なんだが。」
急に声色が変わる。その瞬間、心からの恐怖を感じた。ここで死ぬかもしれない、そう思えた。それくらい、低く冷徹な恐ろしい声色だった。
「この事件から手を引け。」
これは脅しじゃない、そう確信する。エグゼは続けて
「お前らがこれ以上突っつきまわすと山本 久留実どころか、契約した悪魔すら表に出てこなくなる。もう時間が無いんだ。このままだと、どのみち山本 久留実は死ぬ。」
「えっ、どういうこと?」
「残念、時間切れだ。」
遠くの方で確かに何名かの人が走ってくる足音が聞こえる。
「まって、まだ話は終わってない!!」
私は呼び止める。が、
「こっちの話は終わった。じゃあな。あっ、次あった時は俺、お前ら殺すかも。」
そう言って彼は消えた。その場からフッと跡形もなく。
警部達が着くころには、私が一人、廃墟の真ん中で突っ立っているだけだった。
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