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ボーン
ボーン
ボーン・・・
静かな練習ホールに規則正しいボールの音が響く
慣れ親しんだ感触とこの音
頭の中を落ち着かせるには一番だった、ボールの音
「・・・帰るか。」
いつから独り言なんて言う様になった?
そんな事すらまた独り言として口から出てきそうで唇を噛む
──『颯太ー、もう終わりかよ・・・』
ホールの隅から
聞こえそうな
いつも側で俺を野次っていた声
聞こえる筈がない
彰良はもう大学にはほぼ顔を出していない。
彰良だけでなく、バスケを続けるメンバーは新チームとの時間が増えるに従って・・少しずつここから離れて行く人間が増えた
俺だって論外ではなくその一人。
空いた時間に、もしかしたら誰か居るんじゃないかという期待は虚しく
堕ちて行く陽と共に気持ちまで引っ張られそうで、暗くなる前に大学を出た
冷たい暮れの風に頬を打たれながら
持て余した時を、去年まではどうしていたんだっけと思い出す
今までスケジュール管理は必要だと思っていても、こんな風に時間を持て余す事なんてなかった
大学から徒歩圏内のアパートがいつも便利で・・
でもいつからか、失敗したとも思う
独りきりの部屋
たまには真っ直ぐ家に帰りたくない時もある
誰かと居たいって訳じゃない。
ただあの部屋に居ても・・
「・・・、」
コンビニ寄ってから帰ろう
ちょっと早いけど夕飯適当に買って。寒いし、おでんにしようか
実家でおでんの時はいつも食べきれない量だった
家族のそれぞれ好きな物を用意すると溢れちゃうのと母さんが笑って、笑いながらその話をいつも・・
いつも、遥奈にしていた。
そして
食べきれないからと彰良を呼んだっけ
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