兄貴とブランコとラジオ体操

1/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
緑色っ!  思わず声に出しそうになって、新橋美菜は慌てて目をそらした。胸に当てた手に心臓のドックン速めが伝わってくる。 「だ、大丈夫よ……だってまだ」 キイイ。ギイイ。行ったり来たりのきしむ音がする。……あれだ。いわゆるブランコという。通りすがりの民家の庭の手作りっぽいそれ。 美菜は青ざめ、急いで足を踏み出した。駆け出したいのだけど、いやいや、もし段差でも踏み外したら? うっかり大切なものを落としでもしてしまったら? 万が一の出会いチャンスをぶっ飛ばしてしまうことだって。 ――だからいつも通り、慎重に歩を進める。 でも緑。ブランコ。ヤバい、あと1つ。その3つが揃ってしまったら――。 ふっかふかのストールを巻いたお姉さんが目の前を横切った。ふかふか。ふかふか、来たー! 思考が止まる。 美菜は、全速力で走り出していた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!