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付き合ったからと言って、私たちの関係は変わらない。
物足りなくもあり、今まで続いてきた安心が心地いいとも思う。
呂玖は宣言通り、本気で勉強に励んでいた。
初めのころは、勉強を教える以前の問題だった。
「何がわからない?」
「うーん」
「苦手なとこある?」
「ていうかさ、もう教科書こんなに進んでたの?」
え?えぇぇぇぇ!
もはや季節は2学期ですが?補助テキストはもう2冊目だよ?
「呂玖」
「は、はい」
どすの聞いた私の声にビビる呂玖。
「今年は学祭も体育祭もないと思え…」
「ひっ!わ わかりました!」
こうして、クラスの皆様の協力も得て、冬休みには何とか"受験対策"的なものができるようになった。
きっとこの何か月かは、呂玖にとって何の記憶もない月日となっただろうな。
クリスマス前は本気の"ぬけがら"だった。
呂玖と付き合って、はじめてのクリスマス。
吉仲家の女子はなぜか、私にPJ(ピー〇ジョン)のカタログを持って来訪し、
盛り上がっている。
「あのぉ、りみちゃん、るみちゃん」
「なに?」
「決まった?」
「これは何のための下着選びでしょうか?」
カタログに踊る“聖夜の小悪魔コーデ・天使コーデ”の文字に顔が引きつってしまう。
私まだ、中学生ですが…
「これって、完全なる“不純異性交遊”では?」
「そっかぁ」
「呂玖にはまだ早いかぁ」
あたりまえです!
「でもでも、」
「デートするんでしょう?」
うーん、そうはいっても、いつも如月家か吉仲家でケーキ食べたり、ちょっと豪華な夕飯食べたり、プレゼント交換したり、ゲームしたりって感じだったから…。
「ヤダぁもしかして、呂玖からお誘いないの?」
「…」
やっぱ呂玖もいつもと同じ感じに考えてるんだろうなぁ。
どっちにしても一緒に過ごせるし。
「ありえない。」
「呂玖」
なぜか、呂玖のお姉さまたちのほうが、私よりご立腹だ。
「ただいまぁ」
そこにタイミング良く?呂玖が帰ってきた。
いや、ただいまって、ここあんたの家じゃないよね?
「吉仲家誰もいないんだけど」
とか言いながら、リビングに入ってくる。
「って、姉ちゃんたちここにいたの?」
のんきに話しかける呂玖に、りみるみは、冷ややかだ。
「何やってんの?俺も混ぜて」
「いいわよ」
そういうりみちゃんたちに喜んで、私の横に座る呂玖。
「呂玖もココア飲む?」
その空気感にいたたまれなくなって、聞く。
「うん。牛乳たっぷりのやつ」
「はいはい」
そういって、私は冷蔵庫からミルクを出して、ココアを入れる。
「何見てたの?」
テーブルの上に伏せてあるカタログが気になったのか呂玖が手を伸ばす。
ヤダ、なんか恥ずかしいから、るみちゃん隠してよと心の中で思うけど、その思いは届かない。
それどころか、りみるみは恐ろしい行動に出る。
「クリスマスデートにピッタリの下着選んでたの」
るみちゃんの言葉にちょうどカタログのページを開いてた、呂玖の動きがとまる。
「…っ!」
にやりと笑いあうりみるみ。
ちらっと私を見る呂玖。紅くなってうつむく私。
「…。だ 誰の?るみちゃん?りみちゃん?…」
ぎこちなく聞いてくる呂玖の問いかけに、爆弾を落とすりみちゃん。
「ヤダ、もちろんまなのだよ」
バサッと雑誌をおとして、呂玖が私を見ているのがわかる。
一瞬ののち
「いや、俺高校受かるまで、そういうのしないって義雄さんに約束してるから!」と勢いよく呂玖がまくしたてた。
するとさらに、るみちゃんが、
「え?だって呂玖、あんたまなのこと誘ってないんでしょ?」
と言い出した。いやいやるみちゃん!
「え?は?え?…」
もちろんテンプレ通りてんぱる呂玖。かわいいけど…かわいいけど!
「彼女を誘わないなんてねぇ」
「残念な感じよねぇ」
そんな二人のやり取りに、むちゃくちゃ焦ってる呂玖。
「まな最近かわいくなったし、」
「クリスマスにこんなの見れる幸運な男子が現れちゃうかもね。」
いや、何でしょうかそれ?呂玖以外になんか誘われないし。
でも、呂玖はハッとしたように、立ち上がって、私のそばまでつかつか歩いてきて、
「まな!」と呼ぶ。
「は はい」私も思わずこわばってしまう。
「クリスマス、俺と一緒に過ごしてくれる…?」
最初の勢いは急にしぼんで、不安そうな顔で声もだんだん小さくなっていく。
「い いいよ」
私のその返事を聞いた、りみちゃんとるみちゃんが、呂玖の背後で、そっと親指を立てて笑った後、静かにリビングを出ていった。
ありがとう、。
こうして、二人の協力により、私は初めて“恋人”としてのクリスマスを過ごすことになった。
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