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「ごちそうさま」 二人で1000円でおつりがくるデートだったけど、 心は満たされた。 中学生ってこんなもんだな。 てか、受験生だし。 早くうちに帰らなきゃ。 ピロン 私のスマホが鳴る。 #家にチキンあるから、呂玖と食べな #食べ終わったら、しっかり勉強してね お母さんからだ。 「奈々子さん?」 「うん、うちにチキンあるから二人で食べろって」 「行く行く」 「ご飯もあるし、腹ごしらえして勉強しよう」 ちょっとへこむけど、二人ならがんばれる。 「よし、そうすっか」 二人で手をつないで家路を急ぐ。 受験生としては甘いけど、 つかの間のイベントを楽しめた。 「はぁ腹いっぱい」 「だね」 「俺一回風呂入ってくる」 「うん、私も」 そう言って、立ち上がった私を、 呂玖が見上げる。 「まな、その前にもうちょっと」 そう言って立ち上がると、 グイッと私を引き寄せて抱きしめた。 「なんもしないって言ったけど、 一回だけ、キスさせて」 顔が熱くなるのがわかる。 「な、なんでそんなこといちいち聞くの? 恥かしいじゃん」 かといって、いきなりされるのも心臓に悪い。 「ごめん、でも、いい?」 そう言って肩に手を置いて、私を見つめる。 ダメなわけないじゃん。 私はそっと目を閉じた。 静かな部屋に、呂玖の息遣いが聞こえる。 緊張してるんだ。 呂玖も同じくらい、ドキドキしてくれてる。 そっと唇が重なる。 それだけで、満たされてしまう。 離れた唇から 「メリークリスマス」 とささやかれた。 「うん、メリークリスマス」 初めてのクリスマスは、 受験生の思い出と一緒に、 幸せな時間を刻むことができた。
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