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初詣とは神頼みの行事なのかと思うほど、 その年は呂玖は神様に深く深く拝み倒した。 「あとは、努力と実力だな」 朔也さんに言われている。 呂玖は単純だから、 教えられた勉強は、面白いほど素直に吸収して、 驚くほどの成長を遂げた。 実際、 『絶対、まなと通学したい!』 と、言う執念のもとに、 部屋に私の写真張って 勉強を頑張ったらしい。 彼氏じゃなかったら…、 いや彼氏だとしてもやばいやつだ。 受験は緊張さえしなければ完璧だと言えるほどだった。 その結果、 私も、呂玖も、そこそこの成績で、 見事、高校受験を突破した。 「いい神様だったんだ」 と呂玖は喜んでいた。 いやいや、そこは呂玖の頑張りの結果なんだけどね。 晴れて私たちは、 同じ高校に入学し、 呂玖は希望通り軽音部に入部した。 私は、週3で活動している、 華道部に入った。 それだと軽音部のお手伝いもできるし。 『過保護だね』 と知紗子に言われた。 ちなみに知紗子は茶道部。 「あこがれてたんだよね」 と言っていただけあって、 熱心に部活動をしている。 確かに、呂玖のこと心配なのは否めない。 ブレザーの制服は、呂玖をよりかっこよく見せるし、 やっぱり高校でも最初からもてた。 “彼女いるらしいよ” その噂も瞬く間に広まった。 私への評価は、決して高くない。 『おかんかよ』 と笑ってくれる人はましだ。 やっぱり高校でも言われる。 『釣り合わない』 この言葉はどうしても気持ちえぐられる。 そんなの私が一番わかってるっつーの。 それに、怖い…。 呂玖とは、ずっと一緒にいるし、 燃え上がるような恋愛って感じじゃない。 でも、幼馴染ってだけじゃない、 彼氏としての、男としての呂玖を見るたび、 どんどん好きになっていく。 そんな私の気持ちが怖い。 長く一緒にいる分、 失うことへの怖さも半端ない。 だって、この関係が崩れたら、 もう、幼馴染に戻ることはできない。
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