9

1/1

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

9

高校生って人生の中で最も凝縮された時間なのかも。 子供と大人の間で、 いろんなかと感じて、経験して、 大人になりたくて、子供でいたくて、 制服を脱いだら、押し出されるように大人にさせられる。 そんなあっという間の青春を経て、 私は大学へ進学した。 呂玖は、持ち前の感性を生かして、 広告代理店への就職を勝ち取った。 大人になっても、天然で、 まっすぐで素直な性格は変わらず、 「騙されて壺とか買うなよ」 と、みんなに言われていた。 私は、隣県の大学だったため、 1人暮らしを始めた。 私が家を出るとき、 親よりも耀太がさみしがったのが、 意外と言えば意外だった。 私たちは、仲のいい兄弟ではあったけど、 そこまで、なれ合ってるわけでもなかった。 それでも、私もやっぱり、 弟はかわいい。 少し悲しげな表情を見て、 ちょっとウルッと来た。 「俺はまだ、(ここ)いるから 毎日でも遊びに来いよ」 こんな時も呂玖は、 さりげない思いやりを見せてくれた。 社会人になってすぐ、 呂玖は免許を取った。 「まなに会いたいから」 そんな単純な理由。 呂玖はいつもまっすぐで、正直だ。 他の人にもそうだけど、 私に対しては特に、 ストレートに対面してくる。 「いつまでも少年の心っていうのは、ああいうのだよね」 拓哉君はそう言って、いつも愛おしそうに呂玖を見ている。 この人はも、呂玖のこと好きなんだなって、思わされる。 一方知紗子は、 「私はあぁいうのはめんどくさくて無理」 と言ってくる。 確かに、知紗子と呂玖では合わなそう。 だからこそ、私と知紗子もうまくいっているんだろうけど。 呂玖は言葉通り、 隣県まで私に会いに来てくれた。 特に取り柄のない私は、 社会人になるにあたり、知識や学力をたくさんつけたかった。 そんな理由で大学進学を選んだ私を、 呂玖は、 「まだ勉強したいとか、まじでまな尊敬する」 って言ってくれた。 将来を決めかねてるだけなのに、 呂玖といると、自分も正当化されてしまう。 でも、呂玖は私にとって一番の理解者で、 支援者だ。 興味のある講義はウケられるだけ受けて、 語学も積極的に学んだ。 そんな私を応援してくれる呂玖を、 私も支えていきたいって思った。 「もっと男を知ったらいいのに」 なんて、言う子もいたけど、 私にとって呂玖は、なくてはならない存在、 であることに変わりはなかった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加