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ずっと一緒にいたい。 でも、それを壊したのは、私だった。 大学も2回生。 新歓での飲み会の季節だ。 「1・2年はアルコール無しね」 無駄に真面目なリーダーが席割を支持している。 ほっとする。 映画サークルという緩いサークルには、 それほどの人数はいなかった。 それでも掲示板に、 お勧め映画を張りだしたり、 学祭の上映会を主催したりと、 多少の活動はしていた。 大抵は楽しい活動なんだけど、 3年に、若干苦手な先輩がいた。 坂城(さかき) 未央(みお)さんだ。 名前と見た目を比べて、完全な偏見だけど、 第一印象は"ホスト"だった。 なぜか私は彼のグループに入れられており、 担当わけでも、なぜか同じになってしまう。 「坂城(さかき)先輩って、 絶対まなのこと狙ってるでしょ?」 同じサークルの子に言われて、 「まさか」 と思っていた。 だって、先輩の周りには、 私とは正反対のお姉さん系の女子が多かったから。 まず、なぜ先輩が映画サークルに入ったのか? それすら疑問なほど、はっきり言ってチャラい人だった。 でも、どんな女子にも分け隔てなくって感じで、 だから、私みたいな普通の子にも話しかけてくるんだろうな。 坂城さんは、 女の人の扱いに離れてるようだけど 距離感が近くて、 何となく苦手だった。 今回は、席が離れたし、からんでくることもない、 はず。 飲み会自体は楽しく終わった。 二次会への誘いを断る。 だって呂玖から —今日会いに行くね ってメッセージがあったから。 居酒屋を出て、みんなとは反対のほうに進む。 「如月さん」 今聞きたくない声で、呼び止められてしまう。 「坂城さん、お疲れ様です」 「2次会行かないの?」 「あ、はい、予定があるので」 「えぇ残念」 愛想笑いだけしておく。 「こんなとこで悪いんだけどさ、 新入生の上映会、なるべく早くやりたいから、 手分けしてアンケートとることにしたんだよね」 あぁ、その話か。 「わかりました、週明けにリクエストbox作っときますね」 早く帰りたいのに。 「あ、悪いね、周知はグループLineで送ろっか?」 「そうですね。その辺は先輩にお任せします」 「なんか急いでる感じ?」 「あ、はい…まぁ」 「え?何の用事?」 「あの、彼氏がくるんで」 こういう人にははっきり言ったほうがいいのかも。 その判断ははずれだった。 「へぇ、如月さん彼氏いるんだ」 いたら悪いかよ。 心の中で悪態をついてしまう。 「なんか、帰したくなくなっちゃうな」 「は?」 繁華街の明かりから少しは習たところ。 人通りはないわけじゃないけど、 見知らぬ男女の会話なんて誰も気にしてない。 「はは、坂城さん酔ってるんですか?」 はぐらかそうとするけど、視線が怖い。 「え?もしかして俺の気持ち気付いてないの?」 何のことでしょう? なんだか距離を詰められてる。 「す、すいません。マジで彼氏待ってるんで」 そう言ってひるがえした体が、 バランスを崩してしまう。 まずいと思った瞬間、 先輩の腕が私を抱える。 ごめんなさい、と謝ろうと思った瞬間。 「…まな」 路地の向かいから一番聞きなじんだ声がする。 「呂玖」
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