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「ごめん、」 ふいに、呂玖の熱が、私から離れた。 「…え?」 いろんな急展開に、追いつけない。 涙に気づいて、急いでぬぐう。 「だ、大丈夫だよ、ただびっくりして…。」 「違う、勃たない」 え? 「寝よ、疲れたし、洋服…ごめん、着替えて」 そう言って、ベッドサイドのスウェットを、 私に手渡す。 「…う、うん」 翌朝— 「おはよう」 「おはよう」 やっぱりぎこちない。 昨日のことは夢みたいに、 なかったことになってないかな、 なんて期待したけど、そんなわけないか。 軽く朝食を済ませ、 コーヒーを入れた。 全然口数が少ない呂玖。 「あのさ、昨日の先輩だけど…」 「まな、あのさ」 私の言葉を遮って呂玖が言葉を発する。 「ん?」 「ちょっと距離置かない?」 「…え?」 「なんていうかさ、 俺も社会に出てさ、 今までより世界広がったっていうか、 ずっとお隣同士の雰囲気のままだったのが、 狭く感じてたっていうか」 私の方は見ない。 コーヒーを見つめたまま続ける。 「まなも、俺も、今はそれぞれの付き合いがあって、 お互いそれぞれの世界ができたっていうかさ」 「な、何それ」 「ちょっと、お互いの世界を大切にしたほうがいいんじゃね?」 「え?それって、先輩のこと? だとしたら、ほんとに何もないよ」 「いや、そういうんじゃないんだけど、」 「だったら」 「いや、ぶっちゃけ俺も俺の世界があってもいいのかなって」 何それ? 私に飽きたってこと? 「まぁ、幼馴染ってのは変わんないし、 いったん別れてもいいのかなって」 言ってることほんとバカみたい。 何言ってんのかわからない。 「なんで、なんで別れる必要あるの?」 「いや、なんていうか…」 頭をかいて困ってるときの顔を見せる。 あぁ、やだ、 振られるのも怖いけど、 私、めんどくさい女の典型みたいになってる。 それも嫌。 別れないでって、縋ったら、 そのほうが呂玖に嫌われるんじゃない? でも、 でも、呂玖と距離を置くって、どうしたらいいの? 「会いに来るの大変なら、ラインだけでいいよ」 「…」 「私が実家帰る頻度増やしてもいいし」 あぁ、もう完全にひいてる。 「…呂玖」 「ごめん、とにかくいったん別れたい。」 怖かった言葉が、 頭の中でこだまして、 瞳の奥が崩壊した。 声も出ないほどボロボロとなく私。 「…。帰るね」 飲み干されたマグカップが机に置かれて、 呂玖が立ち上がる気配がする。 そのまま、遠ざかって、 あっけなく玄関のドアが開いて、閉まった。
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