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呂玖との終わりはあっけなかった。 ちっぽけなプライドや、 何となくやっちゃいけない気がして、 呂玖を追いかけるようなことはできなかった。 実家に帰っても、呂玖に会うことはなかった。 「まなが帰ってくるタイミングで、 呂玖、外泊したりするんだよね」 りみちゃんたちは、唇をかんでそう話してくれた。 別れた理由をりみちゃんもるみちゃんも耀太も、 聞いてなかったみたいだった。 「先輩との関係を勘違いされちゃって」 と言ったけど、 付き合いの長いみんなには、 責められることもなく、 でも、納得してくれることもなかった。 知紗子は、 「ちゃんとはっきりさせなよ」 と言われたけど、正直どうでもよかった。 いろいろ考えたよ? もしかしたら、エッチ我慢してた? とか、ひょっとして、社会に出たら、 私なんかより素敵な人に会ったから? とか。 でも、呂玖にふられたという事実は変わらない。 理由より、その結果が、私にはすべてだった。 どこから聞いたのか、 「彼氏と別れたんなら、俺と付き合ってみない?」 なんて、坂城さんに言い寄られた。 あんたのせいだよ。 とも言えず、 なんで私にこだわるんだろうという疑問も、 付きまとった。 でも、どうしても先輩の香水が好きになれない。 呂玖でなかったら、興味ももてない。 私の体にはもう呂玖が染みついている。 あの日の呂玖が忘れられなくて、 誰とも付き合うこともなく、 大学卒業を迎えた。 輸入お菓子メーカーに就職が決まって、 お祝いをしてもらった時も、 吉仲家のメンバーには、呂玖はいなかった。 「卒業おめでとう」 「一時はどうなるかと思っけど、 まなが笑顔になってよかった」 りみちゃんるみちゃんと耀太には、 ほんと助けられたなぁ。 「3人がいなかったら大学辞めたたかも」 ほんと引きこもりみたいになりかけてたし。 カラオケ、映画、ショッピング。 新作ゲームとかいろいろ私に付き合ってくれたもんね。 時間だけじゃ解決できないことも、 みんながいたから、乗り越えられたなぁ。 あと、知紗子にもいろいろ付き合ってもらったなぁ。 私の周りは、ほんとに感謝に値する人ばかりだ。 「…」 「あのさ、まな」 「ん?」 耀太が小さな包みを出した。 私はそれを受け取る。 「開けていい?」 こくりとうなづく耀太を見て、 そっと開いてみる。 可愛いバレッタが入っていた。 「かわいい…これ耀太が?」 「…う、うん」 ちょっと違和感を感じた。 もしかして…。ううん。 そんなわけない。 耀太が、呂玖から預かったのかも…。 なんていう淡い期待は、きっと見当違いだろう。 「ありがとう」 こうして私は、みんなに見守られて、 社会人への一歩を踏み出した。
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