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一通り、近況を話した後。 やっぱりというか、どうしてもというか、 呂玖の話になる。 「呂玖もたまにきて、たたいてくんだよ」 知紗子がちらっと私を見る。 「拓哉君実は…」 知紗子がそう言いかけると、 「うん、知ってる」 と拓哉君が遮った。 「突然だったから、 結構引きずったけど、 もう、大丈夫だよ」 そう言ったけど、 呂玖の名前が出ると、 少なからず、胸が締め付けられる。 「確かにさ、勘違いされるようなことがあっったのかもしれないよ、 でも、話し合いもそのことに関してのこともなんもなくて、 バッサリ切り棄てるなんてさ、なんか私的には納得いかない」 なぜか私より怒ってくれる知紗子。 ずっと一緒にいたのにあっけなく去っていったことに、 知紗子のほうが、私より感情むき出してくれて、 怒ったり、泣いたりしてくれてたもんね。 「はは…、そっか、そうだよね」 拓哉君は、私たちを見た後、自分のグラスに視線を落とした。 そのあと 「あぁ、これどうなんかなぁ、俺がいうのか?」 とか独り言を言っている。 私と知紗子ははてなでいっぱいに彼を見つめる。 しばらくすると、突然フッと笑った。 そして、ポツリポツリ話し始めた。 「あいつさ、小学校のころからモテてたんでしょ?」 「うん」 「でもさ、特定の誰かに言い寄られたとか、 そんな話聞いたことある?」 そう言われて多い返すと、確かにないかも。 「高校んときもさ、告白呼び出されたりしてたんだよね」 「え?」 私も知紗子も初耳だった。 「でもさ、そういうのまなちゃんに見せたくないし、 知られたくないって。 それに、女子に隙を見せないように、 いつも男子数人と一緒にいたりして」 懐かしそうに微笑む。 そんな…。 「あいつ、まじでまなちゃん命でさ。 卒業してからも俺らむちゃくちゃつるんでたんだよね。 今もだけど」 一口グラスの飲み物を口に入れる。 「合コンとかも、別に人数合わせでもいいのに、 律儀に断ってさ。 あの見てくれだから、むちゃくちゃ会社でももてるらしくて、 でもさ、気持ちわりーんだよあいつ」 そう言って笑う。 「パスケースにも、デスクにも、 あいつの部屋もさ、まなちゃんの写真だらけなの。 あれさ、ストーカーだよねふつーに」 「それは…」 知紗子の笑顔が引きつる。 「でもさ、言うんだよあいつ、 ほんとは、まなちゃん本物を閉じ込めておきたくなるんだって」 「いやそれはさすがに…」 ツッコむ知紗子。 「でしょ? だからさ、あいつビビってたよ、自分に。」 「自分に?」 「うん、まなちゃんを好きすぎて、いつかさ、 まなちゃんの世界とか、視野を、 狭くさせちゃうんじゃないかって、 束縛してどうにかしてしまうかもって」 「そ…れは…」 知紗子も私も戸惑ってしまう。
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